ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

Knee Socks / Arctic Monkeys【和訳】

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あの冬の、火曜日の異常な雨に。カーテンを閉めて明かりをつけて。俺のラコステのシャツとニーソックス姿の君。永遠に続くあの日の午前0時。 ーKnee Socks

 

こんばんは、ベラドンナです。
今週は有明、羽田、大阪と、アークティック・モンキーズ来日公演すべてに馳せ参じ、燃え尽きて気力・体力ともに抜け殻のようになりました。アークティック・モンキーズは実在していて、自分と同じ時代を生きてて年相応の姿になってること、それだけでも感激でした。

「口から音源」を超えた演奏に美声だったし、一挙手一投足がどの瞬間を写真に収めても貫禄のロックスターだったし、でもお茶目なかわいらしさもあったし、もう・・・筆舌尽くしがたいです。聴かせどころで歌と楽器がバキッとキマる感じが超カッコよかったです。アレックス指揮を始めるシーンもありましたし。昔のインタビューで自分のことをコントロールフリークって言ってましたもんね。

最新アルバム『The Car』の優雅でアダルトな世界観に、ロックバンドの生身の力強さが美しく完璧に調和していたのは2階で見た有明ガーデンシアターでした。身振りを交えながら丁寧に語りかけるようなボーカルはものすごい説得力。一音一音、一語一語が計算し尽くされてることを再認識させられました。それぞれの楽器が歌って泣いてるかのようなBody Paintは、現時点でのこのバンドのまさに集大成。ライブを見て『The Car』というアルバムが大好きになりました。

第2夜のZepp羽田では、前日よりぐっとコンパクトになった会場で、ノリノリでストライク決めたりマイクスタンドを振り回したりするゴキゲンなアレックスをできる限り近くで見たいと前方チャレンジ。Brianstormでモッシュ勢に揉まれて圧死しかけました。ラストは仕事の合間を縫ってはるばる駆けつけたZepp大阪ベイサイド。良い意味で観客が元気で、ステージと客席の一体感をいちばん感じました。アレックスも何度も日本語で「ありがとう」と言ってくれたし、サングラスを外して歌う時間も心なしか多めでした。

今回のセットリストはこちらをご覧ください。


本日和訳するのは、大阪公演でのみ演奏された"Knee Socks"。5thアルバム『AM』(2013)より冬の切ない恋の歌です。大好きな歌なので来日公演でぜひ聴きたいなと思っていたので、イントロが聴こえた時はテンションMAX。"505"のように、恐らくは個人的な経験を窺わせる私小説的な歌詞で、冬の冷たい雨の日の忘れがたい一夜が、美しく、詩情豊かに、しっとりと歌われています。

こちらが大阪公演での"Knee Socks"。成熟した今の声と雰囲気にぴったりです。


それまでは特別な関係になかった二人が、そうなるとも思っていなかった二人が、あの日、あの時、あの場所で、そうなるべくして。普段なら取り立てて珍しくもないありふれた情景が特別なものになる始まりの瞬間。たとえその恋は終わってもビビッドな印象を残し続ける、時に厄介な記憶。「クロノスタシス」という現象がよく知られていますが、永遠に続くかのように思われるデジタル時計の0:00。

冬の雨の日の午後、カーテンを閉めて明かりをつけて、部屋を暖かくして。外の世界の時間の経過も季節も関係なく気が済むまで、眠りに落ちるまで二人でぬくぬく夜を過ごす恋人たち。夜はいつも、自在に引き伸ばされるもの。咳止めドロップを舐める彼女は風邪気味なのか、ハイになりたくて過剰摂取してるのか。冬の二人だけの世界の、居心地の良さと甘い気怠さ。世界中のリスナーたちそれぞれの、ナイーブで甘く切ない記憶をくすぐる歌詞じゃないでしょうか。

この歌を聴いて連想するのがこの「季節がマヒする君の部屋」というたなかみさきさんのイラストです。彼シャツにニーソックスで過ごす冬の日。

 

 
 
 

 

 

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それでは歌詞にまいりましょう。

You got the lights on in the afternoon
君は午後になって明かりをつけた
An' the nights are drawn out long
それから、夜はいつも長く引き伸ばされる
And you’re kissin' to cut through the gloom
君はキスして憂鬱をはねのけてる
With a cough drop coloured tongue
咳止めドロップ色の舌でね
And you were sittin' in the corner with the coats, all piled high
君は隅っこに座ってた コートがうず高く積まれてて
And I thought you might be mine
それで、君はひょっとすると俺のものかも?って思った
In a small world on an exceptionally rainy Tuesday night
あの、異常な雨の火曜の夜の、二人だけの小さな世界 
In the right place and time
ちょうど、あるべき正しい場所の、あるべき正しい時間に

When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

Well, you cured my January blues
ああ、君は1月の憂鬱を癒してくれた
Yeah, you made it all alright
そうさ、君のおかげで全部大丈夫になった
I got a feelin' I might have lit the very fuse
That you were tryin' not to light
もしかして、俺は火をつけちゃったかもって気がした
君が火をつけまいとしてた、まさにその導火線にね
You were a stranger in my phonebook 
アドレス帳の中で、君は他人だった
 I was actin' like I knew
俺は知ってたかのように振る舞ったよ
‘Cause I had nothin' to lose
だって失うものもなかったからさ
When the winter’s in full swing
冬本番になる頃
And your dreams just aren’t comin' true
君の夢なんて何も叶わないのに
Ain’t it funny what you’ll do?
君がしようとしてることは滑稽じゃない?

When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

The late afternoon, the ghost in your room
That you always thought didn’t approve of you knockin' boots
あの昼下がり、君がブーツをぶつけ合うのを認めないといつも思ってた
君の部屋の亡霊は
Never stopped you lettin' me get hold of the sweet spot
君を止めやしなかったんだ 俺に一番いい場所を許すのを
By the scruff of your knee socks
ニーソックスの奥の

You and me could have been a team
君と俺はチームになれたはずなのに
Each had a half of a king and queen seat
王様と女王様の席を半分ずつ分け合ってたよ
Like the beginning of Mean Streets
『ミーン・ストリーツ』の始まりみたいに
You could be my baby 
君は俺の愛しい人になれたはずなのに

All the zeros lined up
全部のゼロが並んだ
But the number’s blocked
けれど、番号はブロックされてる
When you’ve come undone
君の心が離れてしまったときには


When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

 

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