ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

Body Paint / Arctic Monkeys【和訳】

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ

ボディペイント。それは君の身体に刻まれた裏切りの証。涙が出そうでも、何食わぬ顔で歌のネタにする。 ーBody Paint

こんばんは、ベラドンナです。
日増しに春めき、Arctic Monkeysの来日公演も近づいてきました。
今夜は、セットリストの後半で演奏されるだろう"Body Paint"を和訳します。最新アルバム「The Car」より2曲目のシングルです。メンバー4人が奏でるエネルギッシュなバンドの音と、優雅で豪華なストリングスが融合した、まさに大人のロックンロールな曲。


前回の"There'd Better Be a Mirrorball"の記事でも述べたように、この「The Car」というアルバムは、映像がなくても、聴くと映画をみたような感覚を持つ作品です。

 

 


記号論的な、あまりに記号論的なMV


夜遅いですし、夜遅くなくてもまともに書ける気はしませんが、このMVをみることで、どうしてこのアルバムをこんなにも映画的だと思うのか、腑に落ちた気がします。いやぁ、思考が難しすぎるよ、アレックス。。。シニフィアン・シニフィエってなんだっけ・・・


映画の制作過程がモチーフになっており、「Fool(愚者)」のタロットカードを燃やすシーンから始まります。"There'd Better Be a Mirrorball"の歌詞で言及される「romantic fool」を思い起こさせます。このカードの数字はゼロ。数字と意味に縛られた世界の外にいる、何者でもないまっさらな存在です。それを燃やした炎で、タバコに火がつけられます。表現された以上、なんらかの意味を持つことからは逃れられないということを象徴的に表しているのでしょうか。(まさに、いま私が歌詞や映像を解釈しようとして、ここに書いているように。)


その後、いくつかの断片的な映像の後に、関連する記号や単語、道路標識(「The Car」だけに)が映し出されます。監督したBrook Linder氏いわく、このMVは「象徴的なイメージの創造を視覚化したもの」とのこと。映画鑑賞とは、観客が映像をみてその意味を読み取るもの。逆に言うと、映画制作とは、伝えたい意味が先にあって、それを観客が読み取れるような映像をつくる作業です。

映像の中で、意味は記号に変えられて観客に送られて、受け手側の観客によって意味が復元されます。その伝達が成功するように、記号と意味の割り当てを正確にすべく、余計なノイズを削ぎ落とす編集作業が幾度となく行われます。この映画制作のプロセスを映像化したのがこのMVであり、映画制作とアルバム制作に、アレックスは相似するものを見出したのでしょう。

アレックスは、若い時の作詞よりも率直な感情が表れなくなっていることについて、「蒸留」という言葉を使って説明しています。具体的な要素を除去して、より純化されたコンセプトに精製した結果が詞に表れているということのようです。これも、上述の編集プロセスと相通ずるものだと思います。1stの頃の若者ならではのリアリティにあふれた字余り気味の情報過多な歌詞も、3rdの頃の痛いくらいの恋愛感情が率直に歌われた歌詞がベラドンナは大好きですが、時間は流れるもの。同じところに留まってなどいられません。


Body Paintの歌詞について


あのMVをみた今、「Body Paint」という言葉をどう受け取れば良いのか、なぜ「Body Paint」を示す記号がベン図なのか、より悩ましくなります。きっとこれはアレックスの思うツボでしょう。単に衣装としてのボディペイントかもしれませんし、身に刻まれている過去の音楽性のことでもあるかもしれません。本当に様々な意味を持たせることができる言葉だと思います。ここではいちばん素直に、「彼女に浮気された男の歌」として解釈します。

この歌の主人公は、彼女が浮気を重ねてきたことを知っていて、悲しくて惨めで泣きそうなのに、何食わぬ顔でそれを作詞のネタにします。このBody Paintという、抽象的な失恋の歌に。
悲しむ自分と、それを突き放して見ているもう一人の自分がいるかのようなこの態度自体が、アレックスの言うところの「蒸留」であり、「編集」的な作詞家としてのあり方なのかもしれません。

それでは歌詞にまいりましょう。浮気の痕跡をBody Paintと呼ぶのは、ちょうどよく生々しく色っぽいなと思いました。経験ある紳士淑女の皆さん、いかがですか?

For a master of deception and subterfuge
裏切りと言い逃れの達人にふさわしく
You've made yourself quite the bed to lie in
君は身から出た錆に苛まれてる かなりのベッドに身を横たえてきてね
Do your time travelling through the tanning booth
日焼けブースでタイムトラベルしてきなよ
So you don’t let the sun catch you crying
そうすれば、泣いてるのが太陽に見つからないから

So predictable, I know what you're thinking
全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ

My teeth are beating and my knees are weak
歯はガタガタ鳴るし、膝はガクガクする
It's as if there’s something up with the wiring
まるで配線にでも問題があるみたい
You can poke your head behind the mountain peak
山頂の後ろに頭を突っ込みかねないね
Don't have to mean that you've gone into hiding
行方をくらませたなんて言う必要ないんだよ

So predictable, I know what you're thinking
全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ

I'm watching your every move
君の一挙手一投足を見てる
I feel the tears are coming on
涙が出そうだよ
It won't be long
もう少し
It won't be long
あと少しさ
Straight from the cover shoot
カバー写真の撮影から直行して
Still a trace of body paint
まだボディペイントの跡がある
On your legs and on your arms and on your face
君の脚にも腕にも顔にもね
And I'm keeping on my costume
そして、俺は衣装を着たまま何食わぬ顔で
And calling it a writing tool
それを作詞の道具にしてる
And if you’re thinking of me
もし君が俺のことを考えてるなら
I’m probably thinking of you
俺もたぶん、君のことを考えてるよ

There's still a trace of body paint
まだボディペイントの跡が残ってる
On your legs and on your arms and on your face
足にも腕にも顔にも
There’s still a trace of body paint
まだボディペイントの跡が残ってる
On your legs and on your arms and on your face
君の脚にも腕にも顔にもね

So predictable, I know what you're thinking

全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ