ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

Knee Socks / Arctic Monkeys【和訳】

あの冬の、火曜日の異常な雨に。カーテンを閉めて明かりをつけて。俺のラコステのシャツとニーソックス姿の君。永遠に続くあの日の午前0時。 ーKnee Socks

 

こんばんは、ベラドンナです。
今週は有明、羽田、大阪と、アークティック・モンキーズ来日公演すべてに馳せ参じ、燃え尽きて気力・体力ともに抜け殻のようになりました。アークティック・モンキーズは実在していて、自分と同じ時代を生きてて年相応の姿になってること、それだけでも感激でした。

「口から音源」を超えた演奏に美声だったし、一挙手一投足がどの瞬間を写真に収めても貫禄のロックスターだったし、でもお茶目なかわいらしさもあったし、もう・・・筆舌尽くしがたいです。聴かせどころで歌と楽器がバキッとキマる感じが超カッコよかったです。アレックス指揮を始めるシーンもありましたし。昔のインタビューで自分のことをコントロールフリークって言ってましたもんね。

最新アルバム『The Car』の優雅でアダルトな世界観に、ロックバンドの生身の力強さが美しく完璧に調和していたのは2階で見た有明ガーデンシアターでした。身振りを交えながら丁寧に語りかけるようなボーカルはものすごい説得力。一音一音、一語一語が計算し尽くされてることを再認識させられました。それぞれの楽器が歌って泣いてるかのようなBody Paintは、現時点でのこのバンドのまさに集大成。ライブを見て『The Car』というアルバムが大好きになりました。

第2夜のZepp羽田では、前日よりぐっとコンパクトになった会場で、ノリノリでストライク決めたりマイクスタンドを振り回したりするゴキゲンなアレックスをできる限り近くで見たいと前方チャレンジ。Brianstormでモッシュ勢に揉まれて圧死しかけました。ラストは仕事の合間を縫ってはるばる駆けつけたZepp大阪ベイサイド。良い意味で観客が元気で、ステージと客席の一体感をいちばん感じました。アレックスも何度も日本語で「ありがとう」と言ってくれたし、サングラスを外して歌う時間も心なしか多めでした。

今回のセットリストはこちらをご覧ください。


本日和訳するのは、大阪公演でのみ演奏された"Knee Socks"。5thアルバム『AM』(2013)より冬の切ない恋の歌です。大好きな歌なので来日公演でぜひ聴きたいなと思っていたので、イントロが聴こえた時はテンションMAX。"505"のように、恐らくは個人的な経験を窺わせる私小説的な歌詞で、冬の冷たい雨の日の忘れがたい一夜が、美しく、詩情豊かに、しっとりと歌われています。

こちらが大阪公演での"Knee Socks"。成熟した今の声と雰囲気にぴったりです。


それまでは特別な関係になかった二人が、そうなるとも思っていなかった二人が、あの日、あの時、あの場所で、そうなるべくして。普段なら取り立てて珍しくもないありふれた情景が特別なものになる始まりの瞬間。たとえその恋は終わってもビビッドな印象を残し続ける、時に厄介な記憶。「クロノスタシス」という現象がよく知られていますが、永遠に続くかのように思われるデジタル時計の0:00。

冬の雨の日の午後、カーテンを閉めて明かりをつけて、部屋を暖かくして。外の世界の時間の経過も季節も関係なく気が済むまで、眠りに落ちるまで二人でぬくぬく夜を過ごす恋人たち。夜はいつも、自在に引き伸ばされるもの。咳止めドロップを舐める彼女は風邪気味なのか、ハイになりたくて過剰摂取してるのか。冬の二人だけの世界の、居心地の良さと甘い気怠さ。世界中のリスナーたちそれぞれの、ナイーブで甘く切ない記憶をくすぐる歌詞じゃないでしょうか。

この歌を聴いて連想するのがこの「季節がマヒする君の部屋」というたなかみさきさんのイラストです。彼シャツにニーソックスで過ごす冬の日。

 

 
 
 

 

 

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それでは歌詞にまいりましょう。

You got the lights on in the afternoon
君は午後になって明かりをつけた
An' the nights are drawn out long
それから、夜はいつも長く引き伸ばされる
And you’re kissin' to cut through the gloom
君はキスして憂鬱をはねのけてる
With a cough drop coloured tongue
咳止めドロップ色の舌でね
And you were sittin' in the corner with the coats, all piled high
君は隅っこに座ってた コートがうず高く積まれてて
And I thought you might be mine
それで、君はひょっとすると俺のものかも?って思った
In a small world on an exceptionally rainy Tuesday night
あの、異常な雨の火曜の夜の、二人だけの小さな世界 
In the right place and time
ちょうど、あるべき正しい場所の、あるべき正しい時間に

When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

Well, you cured my January blues
ああ、君は1月の憂鬱を癒してくれた
Yeah, you made it all alright
そうさ、君のおかげで全部大丈夫になった
I got a feelin' I might have lit the very fuse
That you were tryin' not to light
もしかして、俺は火をつけちゃったかもって気がした
君が火をつけまいとしてた、まさにその導火線にね
You were a stranger in my phonebook 
アドレス帳の中で、君は他人だった
 I was actin' like I knew
俺は知ってたかのように振る舞ったよ
‘Cause I had nothin' to lose
だって失うものもなかったからさ
When the winter’s in full swing
冬本番になる頃
And your dreams just aren’t comin' true
君の夢なんて何も叶わないのに
Ain’t it funny what you’ll do?
君がしようとしてることは滑稽じゃない?

When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

The late afternoon, the ghost in your room
That you always thought didn’t approve of you knockin' boots
あの昼下がり、君がブーツをぶつけ合うのを認めないといつも思ってた
君の部屋の亡霊は
Never stopped you lettin' me get hold of the sweet spot
君を止めやしなかったんだ 俺に一番いい場所を許すのを
By the scruff of your knee socks
ニーソックスの奥の

You and me could have been a team
君と俺はチームになれたはずなのに
Each had a half of a king and queen seat
王様と女王様の席を半分ずつ分け合ってたよ
Like the beginning of Mean Streets
『ミーン・ストリーツ』の始まりみたいに
You could be my baby 
君は俺の愛しい人になれたはずなのに

All the zeros lined up
全部のゼロが並んだ
But the number’s blocked
けれど、番号はブロックされてる
When you’ve come undone
君の心が離れてしまったときには


When the zeros line up on the 24-hour clock
デジタル時計にゼロが並ぶとき
When you know who’s callin' even though the number is blocked
非通知で電話しても、誰がかけてきたのか分かってしまうとき
When you walked around your house wearin' my sky blue Lacoste
俺のスカイブルーのラコステのシャツを着て君が家の周りを歩いてたとき
And your knee socks
ニーソックスを履いて

 

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Sculptures Of Anything Goes / Arctic Monkeys【和訳】

ゾッとするような新しい音で、親しみやすさという幻想の泡に穴を開けよう。 ーSculptures Of Anything Goes

 


こんにちは、ベラドンナです。
あと数時間で彼らを見られるなんて、まだ実感が湧きません。有明、羽田、大阪の3夜コンプリートいたします。日本に寄ってもらえなかったら海外参戦も…と考えてたくらいだし、と大奮発。

 

さて、来日を直前に控えたタイミングで、MVが公開されました。これまでの多くの公演でオープニングに使われており、本日の公演でもこの曲からスタートする可能性が高いのではないでしょうか。

お化け屋敷みたいに怪しげで、何かが始まりそうなイントロです。このアルバムがどんな作品なのか、最もわかりやすくリスナーに向けて説明されている曲ではないかと思います。

The Carについて、インタビューでは「必ずしもポップミュージックじゃなくてもいいってスタンスが居心地がいい」という趣旨の発言もありました。歌詞にある「City Life'09」は都市を開発するゲームで、現在は生産終了していることから超レア物になって価格が高騰しているそうです。

09年といえば、彼らにとってはHumbugをリリースした年。前作Tranquility Base〜のラストの"The Ultracheese"でも、騒がしくて目まぐるしい毎日を送っていたその頃とは遠くかけ離れたところにきてしまって、今じゃドアをノックされるだけでびっくりしてしまうくらい静かな生活を送っていること、そしてそのことが作品にも影響していることが窺えました。「City Life'09」の価格高騰に、ふと自らを重ねているのでしょうか。

何でもありの彫刻に向かっていく真っ白なキャンバス」というのはまさに、常に新しい作品を生み出そうとする創作活動のことを言っているのでしょう。インタビューによると、この曲のタイトルはスピルバーグ監督の映画『インディ・ジョーンズと破滅の寺院』(1984)のオープニングで、「Anything Goes」という曲が中国語で歌われるシーンからインスピレーションを受けたものだそうです。

さて、今夜もこの曲のイントロに誘われて、アークティック・モンキーズの新しい音の世界に酔いしれましょう。本当に楽しみですね!!!

 

How am I supposed to manage my infallible beliefs
どうしたら絶対確実な信念を貫けるだろう
While I'm sockin' it to ya?
君に一発ぶちかましながらね
Performin' in Spanish on Italian TV
イタリアのTVで スペイン語でパフォーマンスしてる
Sometime in the future
未来のいつか
Whilst wondering if your mother still ever thinks of me
その間、君のママはまだ俺のことを考えてくれてるかな
Hallelujah
ハレルヤ

Blank canvasses leant against gallery walls
真っ白なキャンバスはギャラリーの壁に立てかけられて
Flowing towards sculptures of Anything Goes
なんでもありの彫刻に向かって流れていく
On the marble stairs
大理石の階段の上で

Is that vague sense of longing kinda trying to cause a scene?
その漠然とした切望は、ちょっと物議を醸そうとしてるのか?
Guess I'm talking to you now
俺は今、君に話しかけてるんじゃないかな
Puncturing your bubble of relatability
親しみやすさという幻想の泡に穴を開けながら
With your horrible new sound
ゾッとするような新しい音で
Baby, those mixed messages ain't what they used to be
ベイビー、それらの雑多なメッセージは昔とは違うんだ
When you said 'em out loud
君が大声で歌ってた頃とはね

Blank canvasses leant against gallery walls
真っ白なキャンバスはギャラリーの壁に立てかけられて
Flowing towards sculptures of Anything Goes
なんでもありの彫刻に向かって流れていく
On the marble stairs
大理石の階段の上で
Leading to almost wherever you want them to
おおかた、君の望むところへ導いてくれるさ

The simulation cartridge for City Life '09
シティライフ'09のシミュレーション・カートリッジは
Is pretty tricky to come by
今じゃ相当、入手困難だ
Village coffee mornings with not long since retired spies
村の朝のコーヒー集会 引退して間もないスパイが参加
Now, that's my idea of a good time
今じゃそれが、俺の考える楽しい時間
Flash that angle grinder smile, gasp, and roll your eyes
この角度で笑って歯を見せて、息をのんで、目を丸くして
And help me to get untied from the chandelier
シャンデリアの呪縛を解くのを手伝ってくれ
And twizzling 'round an umbrella
傘の周りをくるくる回って
I'll sing a tune
一曲歌おう



Body Paint / Arctic Monkeys【和訳】

ボディペイント。それは君の身体に刻まれた裏切りの証。涙が出そうでも、何食わぬ顔で歌のネタにする。 ーBody Paint

こんばんは、ベラドンナです。
日増しに春めき、Arctic Monkeysの来日公演も近づいてきました。
今夜は、セットリストの後半で演奏されるだろう"Body Paint"を和訳します。最新アルバム「The Car」より2曲目のシングルです。メンバー4人が奏でるエネルギッシュなバンドの音と、優雅で豪華なストリングスが融合した、まさに大人のロックンロールな曲。


前回の"There'd Better Be a Mirrorball"の記事でも述べたように、この「The Car」というアルバムは、映像がなくても、聴くと映画をみたような感覚を持つ作品です。

 

 


記号論的な、あまりに記号論的なMV


夜遅いですし、夜遅くなくてもまともに書ける気はしませんが、このMVをみることで、どうしてこのアルバムをこんなにも映画的だと思うのか、腑に落ちた気がします。いやぁ、思考が難しすぎるよ、アレックス。。。シニフィアン・シニフィエってなんだっけ・・・


映画の制作過程がモチーフになっており、「Fool(愚者)」のタロットカードを燃やすシーンから始まります。"There'd Better Be a Mirrorball"の歌詞で言及される「romantic fool」を思い起こさせます。このカードの数字はゼロ。数字と意味に縛られた世界の外にいる、何者でもないまっさらな存在です。それを燃やした炎で、タバコに火がつけられます。表現された以上、なんらかの意味を持つことからは逃れられないということを象徴的に表しているのでしょうか。(まさに、いま私が歌詞や映像を解釈しようとして、ここに書いているように。)


その後、いくつかの断片的な映像の後に、関連する記号や単語、道路標識(「The Car」だけに)が映し出されます。監督したBrook Linder氏いわく、このMVは「象徴的なイメージの創造を視覚化したもの」とのこと。映画鑑賞とは、観客が映像をみてその意味を読み取るもの。逆に言うと、映画制作とは、伝えたい意味が先にあって、それを観客が読み取れるような映像をつくる作業です。

映像の中で、意味は記号に変えられて観客に送られて、受け手側の観客によって意味が復元されます。その伝達が成功するように、記号と意味の割り当てを正確にすべく、余計なノイズを削ぎ落とす編集作業が幾度となく行われます。この映画制作のプロセスを映像化したのがこのMVであり、映画制作とアルバム制作に、アレックスは相似するものを見出したのでしょう。

アレックスは、若い時の作詞よりも率直な感情が表れなくなっていることについて、「蒸留」という言葉を使って説明しています。具体的な要素を除去して、より純化されたコンセプトに精製した結果が詞に表れているということのようです。これも、上述の編集プロセスと相通ずるものだと思います。1stの頃の若者ならではのリアリティにあふれた字余り気味の情報過多な歌詞も、3rdの頃の痛いくらいの恋愛感情が率直に歌われた歌詞がベラドンナは大好きですが、時間は流れるもの。同じところに留まってなどいられません。


Body Paintの歌詞について


あのMVをみた今、「Body Paint」という言葉をどう受け取れば良いのか、なぜ「Body Paint」を示す記号がベン図なのか、より悩ましくなります。きっとこれはアレックスの思うツボでしょう。単に衣装としてのボディペイントかもしれませんし、身に刻まれている過去の音楽性のことでもあるかもしれません。本当に様々な意味を持たせることができる言葉だと思います。ここではいちばん素直に、「彼女に浮気された男の歌」として解釈します。

この歌の主人公は、彼女が浮気を重ねてきたことを知っていて、悲しくて惨めで泣きそうなのに、何食わぬ顔でそれを作詞のネタにします。このBody Paintという、抽象的な失恋の歌に。
悲しむ自分と、それを突き放して見ているもう一人の自分がいるかのようなこの態度自体が、アレックスの言うところの「蒸留」であり、「編集」的な作詞家としてのあり方なのかもしれません。

それでは歌詞にまいりましょう。浮気の痕跡をBody Paintと呼ぶのは、ちょうどよく生々しく色っぽいなと思いました。経験ある紳士淑女の皆さん、いかがですか?

For a master of deception and subterfuge
裏切りと言い逃れの達人にふさわしく
You've made yourself quite the bed to lie in
君は身から出た錆に苛まれてる かなりのベッドに身を横たえてきてね
Do your time travelling through the tanning booth
日焼けブースでタイムトラベルしてきなよ
So you don’t let the sun catch you crying
そうすれば、泣いてるのが太陽に見つからないから

So predictable, I know what you're thinking
全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ

My teeth are beating and my knees are weak
歯はガタガタ鳴るし、膝はガクガクする
It's as if there’s something up with the wiring
まるで配線にでも問題があるみたい
You can poke your head behind the mountain peak
山頂の後ろに頭を突っ込みかねないね
Don't have to mean that you've gone into hiding
行方をくらませたなんて言う必要ないんだよ

So predictable, I know what you're thinking
全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ

I'm watching your every move
君の一挙手一投足を見てる
I feel the tears are coming on
涙が出そうだよ
It won't be long
もう少し
It won't be long
あと少しさ
Straight from the cover shoot
カバー写真の撮影から直行して
Still a trace of body paint
まだボディペイントの跡がある
On your legs and on your arms and on your face
君の脚にも腕にも顔にもね
And I'm keeping on my costume
そして、俺は衣装を着たまま何食わぬ顔で
And calling it a writing tool
それを作詞の道具にしてる
And if you’re thinking of me
もし君が俺のことを考えてるなら
I’m probably thinking of you
俺もたぶん、君のことを考えてるよ

There's still a trace of body paint
まだボディペイントの跡が残ってる
On your legs and on your arms and on your face
足にも腕にも顔にも
There’s still a trace of body paint
まだボディペイントの跡が残ってる
On your legs and on your arms and on your face
君の脚にも腕にも顔にもね

So predictable, I know what you're thinking

全くの予想通りさ 君が何を考えてるのかわかるよ

 



There’d Better Be A Mirrorball / Arctic Monkeys【和訳】

ダンスフロアの狂騒は今は昔。時代遅れのロマンチストのラストダンス。確信させてくれよ、そこにはミラーボールがあるって。 ーThere’d Better Be A Mirrorball

 

こんばんは、ベラドンナです。久々の更新です。
待ちに待った年末年始が、見しやそれともわかぬまに終わりました。惰眠の夢はどうしてこんなにも、手を変え品を変え、ストーリーを不条理に捻じ曲げてでも引き伸ばして、目覚めないための言い訳を作ってくるのでしょう。怠惰の中で、初夢などすっかり忘れておりました。

 

前回の更新からの間、10月にはニューアルバム『The Car』がリリースされ、バンドとしては9年ぶりの来日公演が決まり、喜ばしい限りです。今夜は、アルバム全体への感想と、リードトラックの"There’d Better Be A Mirrorball "について、今更ではありますが、ようやく書いておこうと思います。

 

『The Car』というアルバム

いやー、正直難しかったです。本当はもっと早く新曲について記事を書きたい気持ちではいたのですが・・・今回は歌詞の解釈が難しすぎました。字義通りの内容が分かっても、それが具体的に意味するところを理解するのは難しく。優雅で緻密でメランコリックなラウンジミュージックに自由詩が乗って、頭の中では映画を観ているかのように次々に断片的な映像が浮かびますが、言語化し難いのです。

元々アレックスは、うまくいかない恋愛あるあるだったり、若者のナイトライフだったりを巧みに描写する名手でしたが、前作の『Tranquility Base Hotel & Casino』(2018)ではそれまでの歌詞から大きく転換を見せていました。前作の歌詞は風変わりで難解と評されていることも多いですが、私としてはアルバム全体のストーリーも掴みやすく(そう思っているだけかもしれませんが)、共感も覚えるものでした。月のホテルに住まう往年のスターというキャラクターを演じ、深い孤独感を漂わせながら、現代社会のテクノロジー偏重やコマーシャリズムをシニカルに隠喩的に歌っています。


前作の2曲目の"One Point Perspective"では、「この曲を聴きながらドライブしてた。それとも、全部想像してただけかも。(中略)ちょっと待って、何を言おうとしてたか忘れちゃった。」と歌われます。日常とは、とりとめもない考えを浮かべては何かに中断されたりして忘れてしまうことの繰り返しで、ふと気づけば思いもしなかった場所に行き着いていたりするものだなと、ハッとさせられたものでした。

"One Point Perspective"の記事はこちら。


今回はアレックスいわく、「月から地球に帰ってきた」とのこと。先述の通り、図らずも辿り着いてしまった"月のホテル"という架空の場所から自分の来し方を振り返り、これで良かったのだろうかと延々と自問自答を繰り返していたのが前作でした。今作でも、2曲目のタイトルでも"I Ain’t Quite Where I Think I Am"(俺は、思ってたのとはどうも違う場所にいるみたいだ)と謳われているとおり、現在の場所にいることに違和感を覚えているのに変わりありませんが、たとえ納得してなくても、少なくとも「自分がどこにいるか分かっている。この車の中に。」(アレックス談)というのがこのアルバムのスタンスのようです。

 

この社会で生きている以上、誰しもがどこかの場所を占めているし、「どこにも属さない」というあり方は不可能です。架空の場所から高みの見物をして、社会を外側から眺めていることはできません。また、このコロナ禍は、どれほどテクノロジーが発達したとしても、我々が現実の場所というものに縛られ、制約を受けているかということに変わりはないと再確認させられる機会だったように思います。そんな、現実の場所に縛られながら、時に感傷的になったり、音楽性について語ったり、昔のことを思い出したりと、地上における"One Point Perspective"が今作なのかなというのが、現時点での私の解釈です。

 

ただ、3曲目の"Sculptures of Anything Goes"でも「"共感性"という幻想に穴をあける。雑多なメッセージは、昔歌ってたのとは違うんだ。」と自覚的に歌われているように、安易に共感することを拒むのが今回の『The Car』。音としてはとてつもなく優雅で美しくて、でも歌詞の大部分はハードボイルドで乾いていて、とりとめもなく聞こえ、とっつきにくい。ミニシアターでかかっている、説明が少なくていきなり終わる、難解だけど不思議と印象に残る映画みたいなアルバムです。普段、即効性のあるポップソングに馴染んだ耳には難しく感じますが、感性を研ぎ澄まして格闘する37分間はとても贅沢な時間だと思います。ぜひ聴いてみてください。

There’d Better Be A Mirrorball 


さて、長くなりましたが、今夜紹介するのは『The Car』より、1曲目のリードトラックの"There’d Better Be A Mirrorball "です。曲としても、歌詞としても、歌われている湿り気を帯びた感情をとっても、一番とっつきやすいのがこの曲だと思います。今までのアークティックの曲では恐らくなかっただろう、長いイントロから始まりますが、このイントロの追憶を誘う効果が何しろ凄い。まるで『失われた時を求めて』のマドレーヌの香りみたいな強力さで、忘れていた過去という貯水槽の蛇口を容赦なく緩めてきます。

アレックス本人が監督して16mmフィルムで撮影したというこのPVの、昔の映画のようなざらついた質感のミラーボールの映像も加わると、効果はさらに倍増します。そこで、映像は物憂げに正面を見据えるアレックスの視線に切り替わります。なんというエモさでしょう。胸が締め付けられるような切なさを感じます。


ミラーボールといえばダンスフロア。ダンスフロアといえば彼らのデビューシングルの"I Bet You Look Good on the Dancefloor"(2005)です。ダンスフロアの若者たちの猥雑なエネルギーを、性急なビートに字余りの歌詞を乗せて歌っていた10代のバンドが、17年の長い歳月を経て、ミラーボールのこの静かなバラードを奏でているというのは、なんとも感慨深いものがありますよね。

 

この曲を聴くと、寂れてがらんとした無人の、暗いホールに、埃を被った年代物のミラーボールがぶら下がっているイメージが鮮やかに浮かびます。"It's been nice"という歌詞には、「今まで幸せだったよ、ありがとう。」という別れ話の気配が漂います。主人公は、避けられない破局を覚悟していますが、それでも、煌めくミラーボールのもとでラストダンスを飾りたいのでしょう。素直に読めば恋の終わりの歌ですが、今回のカムバックについてリスナーに向けてメッセージを発信しているようにも取れるかもしれません。ミラーボールの鏡たちは、果たしてどんな心を映すのでしょうか。1曲目から、まるで映画のラストシーンのような始まりです。



それでは、歌詞にまいりましょう。

Don't get emotional, that ain't like you
そう感情的になるなよ、君らしくもない
Yesterday's still leaking through the roof
昨日という日がまだ屋根から漏れてきてる
That's nothing new
そんなの今に始まったことじゃない
I know I promised this is what I wouldn't do
わかってるよ こんなことしないって約束してたことさ
Somehow giving it the old romantic fool
どうしてか、古びたロマンチックな馬鹿をやる
Seems to better suit the mood
その方がムードに合ってるみたい

So if you wanna walk me to the car
そうだね、車まで送ってくれる気なら
You oughta know I'll have a heavy heart
俺が気が重くなるのは分かるだろ
So can we please be absolutely sure
だから、お願いだよ 確信させてくれ
that there's a mirrorball?
ミラーボールがあるってさ

You're getting cynical and that won't do
君は皮肉屋になってる そんなのやめた方がいいって
I'd throw the rose tint back on the exploded view
俺ならバラ色のレンズを通して解像図を見たいさ
Darling, if I were you
ダーリン 、俺が君ならね
And how's that insatiable appetite?
あとさ、どうだい?その飽くなき欲望は
For the moment whеn you look them in the eyеs
しばらくの間、あいつらの目をしっかり見つめて
And say, "Baby, it's been nice"
"ベイビー、良かったよ"なんて言うんだから

So do you wanna walk me to the car?
そうだ、車まで送ってくれるかい?
I'm sure to have a heavy heart
俺は心が重くなるって分かってる
So can we please be absolutely sure
だから、お願いだよ 確信させてくれよ
That there's a mirrorball for me?
俺のためのミラーボールがあるって
Oh, there'd better be a mirrorball for me
ああ、ミラーボールがあるべきなんだよ 俺のためのね

 

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A Certain Romance / Arctic Monkeys【和訳】

アンビバレントな郷愁の念。要点は、ここにはロマンスがないってこと。みんな同じような服を着て馬鹿騒ぎして、音楽なんて着メロのためだけ。でも、あいつらも昔からの友達なんだ。平凡で退屈な郊外だけど、ここが俺の愛すべき故郷。 ーA Certain Romance

 

ご機嫌よう、ベラドンナです。なかなか大人になれないピーターパン症候群です。それでも歳だけは重ねて、それを認めたくなくて、昼と夜が逆の生活を年甲斐もなく送り、身体のあちこちに不調をきたしています。いわゆる中二病的なナイーブさをいつまでも卒業できないからこそ、いい歳してこんなブログを書いてしまうわけですが、いい加減ちゃんと大人を、期待される役割を演じなければと実生活で頑張りすぎると、「私は本当はそうじゃないの・・・」とドッと疲弊してしまいます。心が擦り減れば擦り減るほど、何かを守りたくなって夜に言葉が溢れます。纏めきれない言葉の断片たちが、スヌーピーに出てくるライナスの毛布みたいに。

ちゃんと最低限は大人の顔して生きるから、ここでだけはひっそりと、自由に吐露したいのです。"Whatever People Say I Am, That's What I'm Not"(人が俺をどう言おうと、それ全部俺じゃないからという青臭いタイトルに、きっとこれからも共感し続けてしまうって。そして、"A Certain Romance"をいつまでも諦められずに追い求めてしまうって。でも、ロックを愛する老若男女のみなさまも、こういうところ、ありませんか?

というわけで、過度に小っ恥ずかしい感じで始まってしまいましたが、本日はアークティック・モンキーズの超名曲"A Certain Romance"です。NMEの選ぶ2000年代の名曲ランキングでも10位にランクインしており、イギリス本国で非常に愛されている曲です。1stアルバム「Whatever People Say I Am, That's What I'm Not」のラストをきらきらと飾り、青春の輝きをタイム・カプセルのように永遠に閉じ込めています。歌詞に出てくるリーボックやコンバースが意味する文化・社会階層など、描かれるカルチャーはイギリス固有のものですが、拗らせや燻りを捨てられない人なら世界中誰でも、「わかる!」と思うに違いない普遍性を持った超弩級のアンセムだと思います。

リーボックやコンバースのスニーカー、スウェット、着メロにするためだけの音楽、馬鹿騒ぎの荒んだ日々。このアルバムを通じて、どこか醒めた目線で描かれてきたのは、 「チャブ」と呼ばれる、イギリス郊外の労働者階級の若者の典型的なヤンキー文化。そのあまりの平凡さ、退屈さに「ここにはロマンスがない」と言い放ちます。でもその一方で、そんな彼らも幼馴染。たとえ彼らが道を踏み外すようなことがあっても、決して憎むことはできないと、故郷へのアンビバレントな感情を吐露します。

ごく個人的な話で恐縮ですが、この曲を聴くと、郊外出身だった昔の恋人を思い出します。「どうしても抜け出したかった郊外の退屈。でも不良になった地元の奴らだって今でも幼馴染であることには変わりなくて。」という、まさにこの歌詞のような話を聞いて、そこそこ都会のゲーテッド・コミュニティ育ち、世間知らずのベラドンナは、その眼差しにどこかロマンを感じたものでした。

「ここには本当のロマンスがない」と思うのはきっと、自分は他の人とは違う交換不能な存在として、自分だけの固有の生、特別な物語を生きたいと願うから。傲慢かもしれないけれど、あまりに人間くさい感情ではないでしょうか。郊外であっても、都会であっても、無い物ねだりの我々ロマンチストは、「ここは退屈で、ここでは掴めない"本当"があるはず」と、"ここではないどこか"と、恋の偶然、そして愛の必然を探し続けるのでしょう。あくまで故郷、自分のルーツへのアンビバレントな執着を断ち切れないままに。アレックスが近年のライブでも、"We are Arctic Monkeys from High Green!(シェフィールドの故郷の町の名前)"と叫ぶのにグッときます。

こちらは2006年のスコットランドでのライブ映像です。みんな細くて初々しい!


 

それでは、歌詞にまいりましょう。

 

Well, oh, they might wear classic Reeboks
そうだな、彼らは定番のリーボックを履いてるかもしれないし
Or knackered Converse, or tracky bottoms tucked in socks
くたびれたコンバースを履いてるかもしれないし、スウェットの裾を靴下に入れてるかもね
But all of that's what the point is not
でも、そんなことはどうでもいいんだ
The point's that there in't no romance around there
要点は、そこにはロマンスがないってこと
And there's the truth that they can't see
それと、彼らが知ることのできない真実があること
They'd probably like to throw a punch at me
彼らはきっと、俺にパンチを浴びせたいだろうね
And if you could only see 'em then you would agree
もし彼らを見ることがあれば、きっと君も同意するよ
Agree that there in't no romance around there
この辺りにはロマンスがないって

You know? Oh, it's a funny thing, you know
そうだろ? おかしな話だけどね
We'll tell 'em if you like, we'll tell 'em all tonight
お望みなら、今夜彼らに言ってやろうぜ
They'll never listen, because their minds are made up
彼らはきっと聞く耳を持たないだろうね だって心は頑なだから
And course it's all okay to carry on that way
それでもちろん、このままその調子で行けばいいんだよ

'Cause over there there's broken bones
あの辺りはぶっ壊れてるから
There's only music so that there's new ringtones
音楽は新しい着メロになるためにあるだけ
And it dun't take no Sherlock Holmes
シャーロック・ホームズなんて必要ないよ
To see it's a little different around here
この辺りはちょっと違うんだって分かるのに
Don't get me wrong though, there's boys in bands
誤解しないでね バンドを組んでる子たちもいるし
And kids who like to scrap with pool cues in their hands
ビリヤードキューで殴りたがる子たちもいる
And just 'cause he's had a couple of cans
それに、単にいくらか酒を飲んだからって
He thinks it's all right to act like a dickhead
バカをやってもいいと思ってるんだ

Don't you know?  Oh, it's a funny thing, you know
知らないの? 変な話だけどね
We'll tell 'em if you like, we'll tell 'em all tonight
お望みなら、今夜彼らに言ってやろうぜ
They'll never listen, because their minds are made up
彼らはきっと聞く耳を持たないだろうね だって心は頑なだから
And course it's all okay to carry on that way
それでもちろん、これからもその調子で行けばいいんだよ

But I said no, oh no
でも、俺は嫌だって言ったさ
Well, you won't get me to go
そうさ、君は俺を行かせられないよ
Not anywhere, not anywhere
どこにも行かない どこにもね
No, I won't go
絶対行かないんだ
Oh, no, no
ああ、だめだよ

Well, over there, there's friends of mine
だって、あそこには俺の友達がいるんだ
What can I say?  I've known 'em for a long long time
なんて言えばいいかな? 昔からの長い付き合いなんだ
And they might overstep the line
彼らは道を踏み外しちゃうかもしれない
But you just cannot get angry in the same way
でも、同じように怒ることはできないだろ
No, not in the same way
同じようには怒れない
Said, not in the same way
同じようには怒れないって言ってるんだ
Oh no, oh no, no
ああ、無理、無理ってもんだよ

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Do I Wanna Know? / Arctic Monkeys【和訳】

夜ってのは大概、明日になったら言えないことを言うためにできてるんだ。這ってでも君に帰るよ。でも果たして俺は知りたいのか?君も同じ気持ちなのかって。ーDo I Wanna Know?

 

こんばんは、ベラドンナです。緊迫性もなく寝込むほどでもないけれど、身体のあちこちに不調をきたし、誰よりも早く私の心は梅雨入りです。こういう時は、気を抜くとジメジメとウェットになってしまうので、惨めで滑稽な自分をとことんネタにして、乾いた笑いに変え続けるしかありません。できることならスマートに、サマになるようなやり方で。

さて、そろそろ腰を据えて向き合いたいと思っていたアークティック・モンキーズの5thアルバム『AM』(2013)に、ついに着手しようと思います。これが、隙がなくてなかなか難しい。一見すると、リーゼントに革ジャンでバチバチにキメて、マッチョで男くさい感じのこのアルバム。カッコいいけれど、この「男の美学」感が取っ付きにくいなというのが最初の印象でした。

『AM』以外の時期の歌については、あまりセクシャリティの差異を感じることなくスッと共感したのですが、これはちょっと違うぞと。(※私小説的でパーソナルな要素を強く感じる"Knee Socks"だけは例外で、初めて聴いた時からもう「私の曲!!」となりましたが。)

本日和訳するのはまず1曲目の"Do I Wanna Know?"です。別れた彼女のことを引きずり、深酒しながら、同じ曲をエンドレスリピートしながら、「這ってでも戻る」と繰り返す男の歌。これまでのアレックスの恋愛ウジウジ系ソングであれば、皮肉なセルフツッコミや笑えるオチ等、主人公を突き放して叙述する視点が挿入されて、「恋の病に罹った情けない奴あるある」として解釈すれば良いんだと、共感しやすくなっていたと思います。

しかし、この曲の場合はひたすら、主人公が自問自答を繰り返すスタイルなのです。普通にどう考えてもめちゃくちゃ情けなくて滑稽で、場合によってはストーカーじみた気持ち悪さまで感じさせる男の歌なわけですが、曲がめちゃくちゃカッコいい(しかもアレックスがイケメンでカッコつけも実にキマってる。だってこの歌、ブサイクが歌ったら割とホラーですよ。まあ、こういう未練タラタラな気持ちはベラドンナも分かりますが。)だけに、本人がその情けなさに自覚的なのか、マジなのかネタなのか、テンションが読みづらいんです。まるで、沢田研二の"勝手にしやがれ"から、感情移入するためのヒントを取り去ったような。

行ったきりならしあわせになるがいい
戻る気になりゃいつでもおいでよ
せめて少しはカッコつけさせてくれ
寝たふりしてる間に出て行ってくれ


沢田研二「勝手にしやがれ」(1977)より


この"Do I Wanna Know?"だけを聴いている分には、マジなのか壮大なネタなのか、手掛かりが少なく判断が難しいです。しかし、このアルバムを毎晩のように、何周も聴き込むにつれて、「これはアレックスの渾身の演技なんだろうな、『男』という役の。」という確信に(勝手に)至りました。『AM』全体が、「『男』という生態のしょうもなさにハッと気づかされる瞬間たち、それでも守りたい愛とか美学とか」のようなものを描くコンセプトアルバムなのではないかと思います。

アルバム中の"No. 1 Party Anthem"の歌詞や"Why’d You Only Call Me When You’re High?"のMVを注意深くみると明確なオチがあり、カッコつけてイキがっている男が無様に現実に敗れる様子が皮肉っぽく描かれているので分かりやすいですね。そこあるのはやっぱり、湿っぽい感傷ではなくて、スマートで隙のない、乾いた笑い。『男』として生きることの葛藤や滑稽さに向き合った曲といえば、エレファントカシマシの名曲"化ケモノ青年"を思い出さずにはいられません。

おい今夜は酒もってこい
いいから酒もってこい
こいよもってこいよ
いいから酒もってこい

アノ19世紀以来 今日に至るまで
この国の男の魂はいつだって右往左往
アノ19世紀以来 化ケモノ青年よ この国の男は化ケモノ青年

青春の残像がフイをついてやってくる
悪魔の慟哭 こっちへおいでよ
我々をおとしめる 我々を泣かせてしまう
青春の慟哭 悪魔の囁き

「そう人生の役割演じられぬヤツはクズだ」男は首を振った
アノ19世紀以来 男の歴史とは己のイメージと相克の歴史

エレファントカシマシ「化ケモノ青年」(2004)より


インタビューでアレックスは、「メロディーには甘さがあるけど、本当に甘いものには不吉さ、気味の悪さが潜んでいるもの。夜パーティに参加したりしてる時にふと、鏡が現れたりして、シュールレアリスムの絵画とか、エッシャーの騙し絵(永遠に堂々巡りの階段etc.)の中にいるような気分になるみたいな。」とこのアルバムについて語っています。まさに"Why’d You Only Call Me When You’re High?"のMVの世界観ですね。アレックスもキューブリック映画好きだそうですが、私の大好きな映画『アイズ・ワイド・シャット』(1999)を連想する映像です。

この"Do I Wanna Know?"のように、あえて自分の愚行への自覚が乏しいまま完結させている歌があるからこそ、上述の2曲のようなハッと目が覚めた時の衝撃が際立つのではないかなと思います。小説の伏線みたいですね。

まあ、なんにせよ、"The nights were mainly made for sayin' things that you can't say tomorrow day"というフレーズはどこまでもロマンティックで、大好きです。わー!!ライブバージョンやっぱり超カッコいい!!


長々語ってしまいましたが、歌詞にまいりましょう。

Have you got colour in your cheeks?
頬に色が差したかい?
Do you ever get that fear that you can't shift the type
今までにこういう恐れを感じたことあるかい?
That sticks around like summat in your teeth?
歯に何かが挟まって取れないような
Are there some aces up your sleeve?
奥の手があるのかい?
Have you no idea that you're in deep?
深みにハマってるのに気づいてないのかい?
I've dreamt about you nearly every night this week
今週は毎晩のように君の夢を見てた
How many secrets can you keep?
いくつの秘密を守れるかい?
'Cause there's this tune I found
俺はこの歌を見つけたから
That makes me think of you somehow an' I play it on repeat
君を思い浮かべながら繰り返し再生するんだ
Until I fall asleep, spillin' drinks on my settee
眠りに落ちるまで ソファの上で酒をこぼしながら

(Do I wanna know?) If this feelin' flows both ways?
(俺は知りたいんだろうか)
この感情は双方向に通ってるものかな?
(Sad to see you go) Was sorta hopin' that you'd stay
(君が去ってくのを見ると悲しいんだ)
なんていうか、君が留まってくれるといいなって
(Baby, we both know) That the nights were mainly made
For sayin' things that you can't say tomorrow day
(ベイビー、俺たちはお互いに分かってる)
夜ってものは大概、明日になったら言えないことを言うためにできてるんだって


Crawlin' back to you
這ってでも君に帰る
Ever thought of callin' when you've had a few?
俺に電話しようって思ったことはあるかい?何回かでも
'Cause I always do
だって、俺はいつもだから
Maybe I'm too busy bein' yours
たぶん、俺は君のものでいることに忙しすぎて
To fall for somebody new
新しい誰かに恋をする時間がないんだ
Now, I've thought it through
もう俺は考え抜いたんだよ
Crawlin' back to you
這ってでも君に帰るんだって

So have you got the guts?
勇気はあるかい?
Been wonderin' if your heart's still open
君の心はまだ開いているのかどうか分からないでいるんだ
And if so, I wanna know what time it shuts
もしまだ開いてるなら、いつ閉ざされちゃうのか知りたいよ
Simmer down an' pucker up, I'm sorry to interrupt
落ち着いて口をすぼめてよ 邪魔したね、ごめんよ
It's just I'm constantly on the cusp of tryin' to kiss you
君にキスしたくて仕方ないんだ
I don't know if you feel the same as I do
君が俺と同じように感じてるのかは分からない
But we could be together if you wanted to
だけど、君が望むなら一緒になれるかもしれない

(Do I wanna know?) If this feelin' flows both ways?
(俺は知りたいんだろうか)
この感情は双方向に通ってるものかな?
(Sad to see you go) Was sorta hopin' that you'd stay
(君が去ってくのを見ると悲しいんだ)
なんていうか、君が留まってくれるといいなって
(Baby, we both know) That the nights were mainly made
For sayin' things that you can't say tomorrow day
(ベイビー、俺たちはお互いに分かってる)
夜ってものは大概、明日になったら言えないことを言うためにできてるんだって


Crawlin' back to you
這ってでも君に帰る
Ever thought of callin' when you've had a few?
俺に電話しようって思ったことはあるかい?何回かでも
'Cause I always do
だって、俺はいつもだから
Maybe I'm too busy bein' yours
たぶん、君のものでいることに忙しすぎて
To fall for somebody new
新しい誰かに恋をする時間がないんだ
Now, I've thought it through
もう俺は考え抜いたんだよ
Crawlin' back to you
這ってでも君に帰るんだって

(Do I wanna know?) If this feelin' flows both ways?
(俺は知りたいんだろうか)
この感情は双方向に通ってるものかな?
(Sad to see you go) Was sorta hopin' that you'd stay
(君が去ってくのを見ると悲しいんだ)
なんていうか、君が留まってくれるといいなって
(Baby, we both know) That the nights were mainly made
For sayin' things that you can't say tomorrow day
(ベイビー、俺たちはお互いに分かってる)
夜ってものは大概、明日になったら言えないことを言うためにできてるんだって

(Do I wanna know?) Too busy bein' yours to fall
(俺は知りたいんだろうか)
君のものでいることに忙しすぎて
(Sad to see you go) Ever thought of callin', darlin'?
(君が去ってくのを見ると悲しいんだ)
電話しようと思ったことはあるかい?愛しい人よ
(Do I wanna know?) Do you want me crawlin' back to you?
(俺は知りたいんだろうか)
君は俺に這ってでも戻ってきてほしいと思ってるのかな?

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Do Me a Favour / Arctic Monkeys【和訳】

泣きながら恋人をフる世界中のクズ男・クズ女に捧ぐ。別れの理由は、好奇心が重荷になったせい。そんな俺の鼻をへし折ってくれ。フった側の目線で綴られる、映画のワンシーンのような失恋ソング。 ーDo Me a Favour


ご機嫌よう、ベラドンナです。すっかり夏の日差しの、気怠い休日の昼下がりでした。Tranquility Base Hotel & Casino期のライブ映像と一杯の白ワインが一週間の疲労や後悔までも洗い流していきます。

唐突ですが、恋愛ソングの歌詞はちょっと傲慢なくらいの方が好きです。もっと正確に言うと、己の傲慢さやエゴに自覚的に、恋愛を語る歌に共感してしまいます。ブリちゃんの"Oops!... I Did It Again"(♪ああ、私またやらかしちゃった…本気じゃないのに)だったり、ユーミンの"青春のリグレット"(♪私を許さないで、憎んでも覚えてて)、竹内まりやの"プラスティック・ラブ"(♪出逢いと別れ、上手に打ち込んで 時間がくれば終わる)だったり。いい歳なんだから、気分屋と夢見がちは卒業して早く落ち着かないと、痛々しさを増すばかりなわけですが。今日紹介するのも、まさにそんな曲。

ランダム再生で流れてきた"Fluorescent Adolescent"に「私の歌だ!」と共感しまくり、はじめて聴いてみたアークティックのアルバムが「Favourite Worst Nightmare」でしたが、今日紹介する"Do Me a Favour"を聴いて、私のアレックス・ターナーの文才への信頼はさらに確固たるものになりました。別れの理由を「Curiosity becomes a heavy load(好奇心は重荷になる)」と表現するとは、なんてこの人は分かってるんだ!!と。

フった側の目線で描かれる失恋ソングって、結構珍しいですよね。「好奇心を抑えきれないから、君とは別れたい。そんな俺の鼻をへし折ってくれ」とフった恋人に懇願し、「思い上がるのはやめて」とはね返されます。"You could see that we'd cried"と歌っているので、フラれた彼女だけじゃなく、フった本人も泣きじゃくっています自分からフっておいて、無傷ではいられないどころか、多大な心のダメージを負っているこの感じこういう自分勝手でしょうもない、クズ男・クズ女を代弁する歌を、本当によくぞ歌ってくれたと思います。自分が悪いことなんて百も承知なんです。でも、事態はここまできてしまったのだから、こうやって決着をつけるしかないし、悲しむ権利なんてないと言われたって悲しいものは悲しいわけで。

自由恋愛の時代。世の中には恋愛対象になりうる数多の人が存在して、日々新しい出会いも経験する中で、果たして今の相手が最適解なのだろうか、もっと良い人がいるかも…とifの可能性を考えだすとキリがありませんあくまで1対1のモノアモリーを前提とする限り、「選ばなかった選択肢」や「まだ選んでいない選択肢」、はたまた「既にうっかり選びかけている選択肢」への好奇心が限界値を超えると、もう元の関係には戻れなくなってしまうでしょう。

前に"No Buses"の記事でも話題にしたように、隣の芝は青く見え、簡単に手に入るものは魅力的に思えず、手に入らないものや未知のものほど欲しくなるのが人の性です。好奇心の強さは、時に仇となります。イギリスには"Curiosity killed the cat"(「猫に九生あり」と言われるしぶとい猫であっても好奇心を持つと危険なのだから、いわんや人間をや、ですね。)をいう諺もあります。


"The car went up the hill and disappeared around the bend"(車は丘を越えて曲がり角で消えた)という表現が出てきますが、これは"drive someone round the bend"という「人を苛立たせる」という意味の決まり文句と掛けているようです。もくもくと湧き立つ好奇心が心を占拠しはじめると、元々の恋人への忠誠心は薄れていくもので、そうなると彼/彼女に対する許容範囲が狭くなって、苛立つ場面も多くなりがちです。決まり文句を抜きにしても、丘を越えて見えなくなる車のイメージは、ピークを越えた後の恋に重なります。それは終わりの始まり。あの日、あの時を思い出してしまう・・・

もう元には戻れないと終わりを自覚していても、別れを切り出すことは容易ではなく、これまでの関係性をすっかり断ち切ることも非常に困難なものです恋愛の親密な関係を捨てる時の、身を切るような痛み、ストレス。"Fuck Off"なんかじゃとても足りない、生優しすぎるんです。私にとっては、全部のフレーズそれぞれに、様々な記憶を呼び覚まされてしまう強烈な歌詞です。これだけ共感するということは、あらゆる感情生活の中で、エモーションを感じるポイントがアレックスと似てるんだろうなと勝手に慕っているベラドンナです。

この曲はドラムの変則的なリズムが、出だしからしてすごく魅力的ですよね。そういえば最近、2009年頃のアレックスの髪型が好きすぎて真似してみました。重めのパーマがアンニュイでカッコよくて、美しい・・・


 

さてさて、歌詞にまいりましょう。

Well, the morning was complete
そう、完璧な朝だった
Where there was tears on the steering wheel, dripping on the seat
ハンドルに落ちた涙が、シートにまでこぼれてた
Several hours or several weeks
何時間か、何週間か
I'd have the cheek to say they're equally as bleak
俺は生意気にも言うだろう ずっと同じように希望が見えないって

It's the beginning of the end
それは終わりの始まり
The car went up the hill and disappeared around the bend
車は丘を越えて曲がり角で消えた
Ask anyone, they'll tell you that it's these times that it tends
誰かに聞いてみなよ きっとこういう時こそだって言うから
That it tends to start to break in half, to start to fall apart
真っ二つに割れ始めるのは、バラバラになり始めるのは
Hold on to your heart
自分の心を強く持つんだ

And do me a favor and break my nose
それで、お願いだから俺の鼻をへし折ってくれ
Or do me a favor and tell me to go away
それか、お願いだから失せろって言ってくれ
Or do me a favor and stop asking questions
じゃなきゃ、お願いだから何も聞かないでくれ

Well, she walked away while her shoes were untied
そう、彼女は立ち去った 靴ひももほどけたまま
When the eyes were all red
目を真っ赤に泣きはらして
You could see that we'd cried
俺たちが泣いてたのが分かっただろう
And I watched, and I waited 'til she was inside
それで俺は見届けてたんだ 彼女が中に入るまで
Forcing a smile and waving goodbye
無理やり作り笑いして、さよならって手を振って

Curiosity becomes a heavy load
好奇心は重荷になる
Too heavy to hold, too heavy to hold
抱えているには重すぎる 抑えておくには重すぎる
Curiosity becomes a heavy load
好奇心は重荷になる
Too heavy to hold, will force you to be cold
抑えきれないほどの好奇心は、君に冷酷さを強いるだろう

And do me a favor, and ask, if you need some help
お願いだから、何か俺にできることがあったら言ってくれ
She said, do me a favor, and stop flattering yourself
彼女は言った 「お願いだから思い上がるのはやめて」
And to tear apart the ties that bind
結びつきを断ち切るためには、
Perhaps 'fuck off' might be too kind
「失せろ」じゃ生優しすぎるくらいかもね
Perhaps 'fuck off' might be too kind
「失せろ」じゃ生優しすぎるくらいかもね

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Fluorescent Adolescent / Arctic Monkeys【和訳】

「ワタシ史上最高」なんて今じゃただの思い出。いい大人になって手に入れたのは、平穏で安定してるけど、タバスコの足りないブラッディ・メアリーみたいな、退屈な日常というブラックホール。刺激的で危なっかしい、蛍光色の青春と引き換えに。 ーFluorescent Adolescent

ご機嫌よう、ベラドンナです。今日はテンション高めです。
久々に晴れた夜、ふとそぞろ神に憑かれ、繁華街の雑踏をかき分け、女ひとり老舗ロックバーに繰り出しました。そこで初体験したのがブラッディ・メアリー。名前の由来はもちろん、血染めのイングランド女王メアリー1世の、ウォッカベースのトマトジュースのカクテルです。

ますますめんどくさい女になってきたベラドンナは、酔いがまわってくるとホットのトマトジュースが欠かせないのですが、実際にトマトジュースには酔い覚ましに高い効果があるようですね。そのおかげなのか、ウォッカが強めの割には下戸な私も健闘できました。ちゃんとタバスコも一緒に運ばれてきて、さらに大好きな曲、ルー・リードの"Perfect Day"(1972)がちょうど巨大スピーカーから流れてきてテンションMAXに。

Just a perfect day
完璧な一日
Drink Sangria in the park
公園でサングリアを飲んで
And then later, when it gets dark we go home
それで、日が暮れたら家に帰ろう
Just a perfect day
ただ完璧な一日
Feed animals in the zoo
動物園で動物に餌をやって
Then later, a movie too and then home
それで、映画でも観て家に帰るんだ
(中略)
You just keep me hanging on 
君は俺を、辛うじて生にしがみつかせてくれる
Just a perfect day 
ただ完璧な一日
Problems all left alone 
問題はすべて置き去りにしたままで
Weekenders on our own, it's such fun
俺たちだけの週末の楽しみ 
Just a perfect day
ただただ完璧な一日
You made me forget myself
君は俺が俺自身であることを忘れさせてくれた
I thought I was someone else, someone good
俺は自分が誰かほかの、善良な人間だと思えたんだ

ーLou Reed "Perfect Day"より


なんて沁みる歌詞なんでしょう。酔いと共に万感の思いが込み上げてきます。アレックスもルーを相当リスペクトしているようで、2013年に5thアルバム「AM」をリリースした際、タイトルの元ネタはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバム名「VU」(1985)だと認めていました。AMのツアー中、ルーの訃報を受けてライブで"Walk On the Wild Side"をカバーしています。


失礼、話が逸れてしまいました。女ひとり、ブラッディ・メアリーにタバスコを振りかける、それはそれで、きっと完璧な夜。今日紹介するのは、私自身がアークティック沼にハマるきっかけになった曲、"Fluorescent Adolescent"(2007)です。恋愛にも仕事にも疲れ切ったある晩のこと、たまたまSpotifyのランダム再生で流れてきて、歌詞はざっくりとしか聴き取れないながら、「え!!私のことを歌ってるの!?」と衝撃が走ったのです。

ハタチそこそこ、下手したら10代の頃にアレックスが当時の彼女でミュージシャンのジョアンナ・ベネットと休暇中に言葉遊びしていたらできた曲だそう。彼女の名前もしっかりクレジットされています。青春を謳歌する若いカップルが、歳をとったらどうなるのかを妄想しながら書いた曲というわけですが、流石の想像力ですね。枯れたベラドンナにグサグサと突き刺さります。「嗚呼、そんな時代もあったね…」とあんなことやこんなことを、思い出さずにはいられません。

タバスコの足りないブラッディ・メアリー」以外にも「すべてが秩序立ったブラックホール」等、パワーワードが見事な韻を踏みながら次々に炸裂します。タイトルからして、素晴らしい語呂合わせのパワーワードですが。至極真っ当で穏やかな日常に潜む退屈の、底知れない恐ろしさ。いつかブラックホールのように吸い込まれてしまいそうな。走馬灯のように、浮かぶのは昔の思い出ばかり。思い出ばかり多くても、喪失感や現状への幻滅を増進するだけだから、もはや全部忘れられてしまえばいいのに。忘れられずにしがみつく…

この曲のMVは、実は幼馴染だった年老いたピエロとギャングの死闘を描く、恐らくはあえてインディー感、低予算感を満載にしたのだろうグラグラした映像作品。観ると私はかなり酔ってしまうので、こちらではアレックスたちがピエロのコスプレをして歌っている動画を紹介します。白塗りしてもアレックスはアレックスですね。



さてさて、歌詞にまいりましょう。うわあああ、やっぱりベラドンナの歌です。ピエロみたいに、惨めな自分を戯画化して笑い飛ばして、もうひと花(!?)咲かせたいものです。青春の後ろ姿よ、待っておくれ…

You used to get it in your fishnets
昔は網タイツを履いてだったのに
Now you only get it in your night dress
今じゃ、もっぱらパジャマのまま
Discarded all the naughty nights for niceness
淫乱な夜を捨てて 貞淑さのために
Landed in a very common crisis
ごくありふれた危機に陥った
Everything's in order in a black hole
ブラックホールでは全てがきちんとしてる
Nothing seems as pretty as the past though
だけど、昔と同じくらい素敵なことはないみたい
That Bloody Mary's lacking in Tabasco
ブラッディ・メアリーにタバスコが足りてない
Remember when you used to be a rascal?
昔やんちゃだった頃を覚えてる?

Oh, the boy's a slag, the best you ever had
ああ、あいつはプレイボーイだったね 君の史上最高は
The best you ever had is just a memory and those dreams
君の史上最高は今やただの思い出 でもあの頃の夢は
Weren't as daft as they seem, aren't as daft as they seem
見かけほど馬鹿げてもなかったし、見かけほど馬鹿げてもないんじゃないかな
My love, when you dream them up
愛しい人よ、君がそれを思いつく時は

Flicking through a little book of sex tips
セックスのハウツー本を読みふけってて
Remember when the boys were all electric?
男の子はみんな刺激的だった頃を覚えてる?
Now when she's told she's gonna get it
今となっちゃ、彼女がそれを取り戻すつもりだって言う時
I'm guessing that she'd rather just forget it
もはや忘れちゃったほうがマシなんじゃないかって思う
Clinging 'till I'm getting sentimental
俺が感傷的になるまでしがみついてさ
Said she wasn't going but she went still
彼女は行かないって言ったけど、結局行っちゃったんだよ
Likes her gentlemen not to be gentle
紳士が紳士的じゃなくなるのが好きなんだよね
Was it a Mecca dauber or a betting pencil?
あれはメカドーバー*1だったかい?賭け用鉛筆だったかい?

Oh, the boy's a slag, the best you ever had
ああ、あいつはプレイボーイだったね 君の史上最高は
The best you ever had is just a memory and those dreams
君の史上最高は今やただの思い出 でもあの頃の夢は
Weren't as daft as they seem, aren't as daft as they seem
見かけほど馬鹿げてもいなかったし、見かけほど馬鹿げてもいないんじゃないかな
My love, when you dream them up
愛しい人よ、君がそれを思いつく時は

Oh, Flo, where did you go?
ああ、フローよ、どこに行っちゃったんだ?
Where did you go? Where did you go?
どこだい?どこに行っちゃったんだ、君は

You're falling about
君は笑い転げてる
You took a left off Last Laugh Lane
最後に笑う道を歩むのをやめちゃったんだ
Just sounding it out
ただどんなものかなって探ってみただけ
But you're not coming back again
でも君はもう戻ってこない
You're falling about
君は笑い転げてる
You took a left off Last Laugh Lane
最後に笑う道を歩むのをやめちゃったんだ
You were just sounding it out
君はただどんなものかなって探ってみただけだったって
But you're not coming back again
でも君はもう戻ってこないんだ

You used to get it in your fishnets
昔は網タイツを履いてだったのに
(Falling about)
(笑い転げながら)
Now you only get it in your night dress
今じゃ、いつもパジャマのまま
Discarded all the naughty nights for niceness
淫乱な夜を捨てて 貞淑さのために
(You took a left off Last Laugh Lane)
(最後に笑う道を歩むのをやめちゃったんだ)
Landed in a very common crisis
ごくありふれた危機に陥った
Everything's in order in a black hole
ブラックホールでは全てがきちんとしてる
(You were just sounding it out)
(君はただどんなものかなって探ってみただけだった)
Is anything as pretty in the past though?
昔と同じくらい素敵なことなんてある?
That Bloody Mary's lacking in Tabasco
ブラッディ・メアリーにタバスコが足りてない
(You're not coming back again)
(君はもう戻ってこない)
Remember when you used to be a rascal?
昔やんちゃだった頃を覚えてる?
(Oh...)
ああ...)

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*1:ビンゴの数字を塗りつぶす用の極太マーカーペン。形状は…まあググってみてください。競馬用の鉛筆は言うまでもなく極細ですね。

No Buses / Arctic Monkeys【和訳】

待ってると来ない。やっと来て乗り込んでみると、そのすぐ後ろにまた来たり。バスも出会いもそんなもの。恋とはいつも、手に入らないものを欲しがるだけの不毛な群像劇。 ーNo Buses

 

こんばんは、ベラドンナです。本日は、土曜に開催されたArcticオフ会でリクエストをいただいた"No Buses"を紹介します。「土曜の夜に期待しすぎるな」と歌う"The View from the Afternoon"を聴きながら向かった人生初のオフ会でしたが、みなさんアークティックへの過剰な愛が溢れるとても素敵な方々で、そんな心配は無用の楽しすぎる宵でした。曲名をはじめ、頭の中でしか発したことがない単語をたくさん聞けて、声に出せて、ものすごく興奮しました。ブログを始めてみた甲斐がありすぎます。書き手冥利に尽きすぎます。

さて、この"No Buses"という曲は、以前ご紹介した"Despair in the Departure Lounge"と同様、EP「Who the Fuck Are Arctic Monkeys?」(2006)の収録曲で、日本のロックバンドの名前にもなっています。イギリスらしい喩えを用いながら、ちょっとシニカルな目線で、恋愛とは何かを考察する面白い歌です。

"Despair in the Departure Lounge"の記事はこちら。


とかく時間に正確なことを当然に期待される日本の公共交通とは大違いで、イギリスのバスは数時間遅れることもザラで、「ずっと見つからない期間があった後に、突然余るほど来てしまう」ことを表す喩えとしてバスがよく使われるそうです。この歌を理解するには、その前提を知っておく必要があります。恋愛のツキを、気まぐれなダイヤのバスに喩えているわけです。(タイトル以外にバスは出てきませんが。)

「誰か良い人いないかな」と前傾姿勢で探しているシングルの時にはまるで見つからないくせに、ようやく見つかったと思って付き合い始めると、「あれ?早まったかな。他にも選択肢たくさんあるじゃん。」と恋愛フラグが突然渋滞し始め、真心に魔がさして、現状に満足できなくなって揺れてしまい、落ち着けない感じでしょうか。恋人がいる時ほどモテる説。こんな経験、覚えがある方も多いのでは?

この現象はきっと、決して偶然ではなくて人の業がなせるもの。映画『アニー・ホール』(1977)でウディ・アレンが「自分を入れるようなクラブには入会したくない」と言っていたように、簡単に手に入るものは魅力的に思えず、手に入らないものほど欲しくなるのが人間なのでしょう。困ったものです。

歌詞の中に「運命の人だと思ってるんだろうけど、彼女だって24人に1人の逸材に過ぎないんだ」という箇所があります。1時間待ってようやく来たバスは、散々待ったという時間と労力を勝手に加味することで、貴重な天からの使いのように思えるかもしれないけれど、毎日1時間おきに24本来るうちの1本に過ぎないんだよという意味でしょう。あまりに主観的な思いこみの罠にはまって、客観性を見失いがちなのが恋という現象ですよね。

ところで、バスを恋愛に喩えた歌といえば、スピッツの『運命の人』(1997)はハズせません。
バスを契機に愛というものを悟る歌というのは共通していますが、こちらは幸せ絶頂の二人。幸福な二人にとっては、ありふれたバスの揺れ方ひとつも永遠になるのです。

バスの揺れ方で人生の意味が 解かった日曜日
でもさ 君は運命の人だから 強く手を握るよ
ここにいるのは優しいだけじゃなく 偉大な獣

愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ
変な下着に夢がはじけて たたき合って笑うよ
余計な事はしすぎるほどいいよ 扉開けたら


それでは、No busesの歌詞にまいりましょう。この動画、なぜ白パーカーのフードを被っているのか分かりませんが、素朴で初々しい感じがかわいらしいですね。来ないバスに、ふと不毛な恋愛の永遠の真理を見てしまうアレックス少年です

 

 

Lady, where has your love gone?
お嬢さん、君の愛はどこに行ったんだ?
I was looking but can't find it anywhere
探してもどこにも見つからないんだ
They always offer when there's loads of love around
愛があり余ってる時はいつも提供されるけど
But when you're short of some, it's nowhere to be found
いくらか足りない時、愛はどこにも見つからない
Well, I know your game, you told him yesterday
やれやれ、君のゲームなら知ってるよ 昨日彼に言ったんだろ?
"No chance, you'll get nothing from me"
「チャンスはないの、私からは何も得られないわ」
But now she's there, you're there and everybody's there
でも今や、彼女も君も、みんな同じ場所にいるんだ
He's in turmoil, as puzzled as can be, just like me
彼は混乱して、この上なく戸惑ってるよ ちょうど俺みたいにね

Let's go down, down, low down
落ちていこう、下へ、ずっと下の方へ
Where I know I should not go
行くべきじゃないって分かってるところへ
Oh, and she, you think she's the one
ああ、彼女ね 君は彼女を運命の人と思ってるんだろ
But she's just one in twenty-four
だけど、彼女は24人に1人の逸材に過ぎないんだ
And just 'cause everybody's doing it
で、単にみんながやってるからって
Does that mean that I can too?
俺にもできるってこと?

Lady, where has your love gone?
お嬢さん、君の愛はどこに行ったんだ?
It was the antiseptic to the sore
それは心の傷への消毒薬だった
To hold you by the hand
君の手を握るためには
Must you first be in demand?
まず君を必要としてなきゃいけないのかな?
How he longs for you to long for him once more
どれだけ彼は切望してることか 君がもう一度会いたいって切望してくれることを
Just once more
もう一度だけでも

Let's go down, down, low down
落ちていこう、下へ、ずっと下の方へ
Where I know I should not go
行くべきじゃないって分かってるところへ
Oh, and she, you think she's the one
ああ、彼女ね 君は彼女を運命の人と思ってるんだろ
But she's just one in twenty-four
だけど、彼女は24人に1人の逸材に過ぎないんだ
And just 'cause everybody's doing it
で、単にみんながやってるからって
Does that mean that I can too?
俺にもできるってこと?

Oh, her eyes went down and cut you up
ああ、彼女は目を伏せて、君の心をズタズタした
And there's nothing like a dirty look from
軽蔑するような目で見られることほど最低なことはないよな
The one you want or the one you've lost
欲しくてたまらない人とか、失った人からね

An ache in your soul, it's everybody's goal
魂の痛み、それがみんなのゴールなんだ
To get what they can't have
手に入らないものを欲しがって
That's why you're after her and that's why she's after him
だから君は彼女を追いかけて、彼女は彼を追いかけるんだ
But saying it won't change a thing
でもそんなこと言ったところで何も変わらない世の常さ

And they'll realise that it won't change a thing
こうして、何も変わらないってきっと気づくんだ
Realise that it won't change a thing
気づけよ 何も変わらないって

 

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The Ultracheese / Arctic Monkeys【和訳】

俺は深く考えてるように見えるかもしれないけど、本当はそんなことないんだ。月に住むロックスターの孤独なんて、超絶に陳腐だよな。ああ、夜明けは重さを増すばかり。ーThe Ultracheese


こんばんは、ベラドンナです。GWが終わり、日常に戻ってきました。長めの連休が終わるといつも浮かぶのは「アノミー」という言葉。「急激な社会変動や自由の増大により、規範が弛緩・崩壊し、個人の欲望が肥大化した結果、不満や焦燥、幻滅などの葛藤に襲われる状態」を指す社会学の用語です。連休と、目的地を定めない旅の開放感に拐かされて、「ひょっとすると、意外と人生、何でもありなのかも?」なんて思い始めて、こりゃまずい、こちら側の世界に戻れなくなってしまう…と慌てて逃げ帰ってきて、こうしてまたブログを書いています。

閑話休題。一昨日で6thアルバム「Tranquility Base Hotel & Casino」のリリースから4年が経ったそうです。ニューアルバムが待ち遠しいものです。現時点で発表されている2022年の最初のライブ出演はイスタンブールの8月9日なので、少なくともそれまでにはリリースされると思いますが、いつになるんでしょう。そして、月面のホテルの次は、アレックスはどこへ行くのでしょう。楽しみでなりません。

このアルバムについては、すでに全11曲のうち10曲の記事を公開しており、残るはラストを飾る'The Ultracheese'のみとなりました。「自分にとってお気に入りのレコードは、訪れることができる場所みたいなものだと感じるから」とアルバムタイトルの命名の理由についてアレックスは語っていましたが、全曲を和訳し終えた今、私にとってもこのアルバムは帰りつくことのできる隠れ家のようになっています。アノミーに襲われる朝も、都会の喧騒に飲まれる昼も、現実逃避したいような夜も、外出中でも家の中でも、これを聴けば自分のデフォルトの位置を取り戻せるような、そんな作品になりました。

密度が濃く示唆に富んだ、内省的で哀愁漂う歌詞と、聴けば聴くほど耳に馴染む美しいサウンド。1曲ずつではなく、アルバムを通して聴いてほしい作品です。たった40分間で、小説を読んで、さらに映画も観たかのような充実感を得られます。
こちら、Tranquility Base Hotel & Casinoの全曲解説です。もしよろしければお供にどうぞ。


さて、本日和訳するThe Ultracheeseですが、歌詞でも言及されているように「黄金時代のアメリカ」を思わせるゆったりした情感豊かな曲調に、過去を回顧して現在の孤独を滲ませるメランコリックな歌詞が乗り、深い余韻を残します。アレックスいわく、この曲や「Cornerstone」(2009)、ラストシャドウパペッツの「The Dream Synopsis」(2016)のような穏やかで叙情的なバラードが最も落ち着く、デフォルトの自分の位置に一番近い曲なんだとか。

The Dream Synopsisの記事はこちら。「俺の夢の話なんて聞かせたら、拷問だよね」と言いながら夢について歌う美しい歌です。今回のUltracheeseとも共通するテーマを持っています。


「Ultracheese」という言葉は、「超絶に陳腐」とか「超クサい」という意味でしょう。日本では月といえばウサギの餅つきですが、英語圏では「月はチーズでできている」という決まり文句があるそうで、そこからの連想なのかもしれません。30歳の誕生日に友人からプレゼントされたスタインウェイのグランドピアノで作曲した、ロックスターの孤独な内面を独白するこの美しい歌を、照れ隠しも込めて「超絶に陳腐」と名付けたのでしょう。

ドアをノックされるとびくつくほどに孤独な生活を送る月の上のロックスターが、「ロケットの打ち上げ(CDリリースと掛けているのでしょう)」の度、予想外のことが起こる度にバーでみんなで盛り上がっていた昔を思い出しています。今の自分が、若き日々からどれだけ遠くかけ離れた場所に辿り着いてしまったかを思い、取り返しのつかない後悔や喪失感に襲われながらも、「君を愛することは一度たりともやめていないんだ」と締めくくります。"the dawn won't stop weighing a tonne"(夜明けは重さを増すばかり)というフレーズが沁みます。眠れぬ孤独な夜、次第に白んでいく窓の外、静かな部屋でひとり。

こちらのライブ映像では、なかなか演技がかった熱唱が見られます。



それでは歌詞にまいりましょう。

Still got pictures of friends on the wall
壁にはまだ友人の写真が貼ってある
I suppose we aren't really friends anymore
俺たちはもう本当の友人じゃないだろう
Maybe I shouldn't ever have called that thing friendly at all
今までだって、仲が良かったなんて言えないのかもね

Get freaked out from a knock at the door
ドアのノックにびくびくする
When I haven't been expecting one
予想もしないことが起きた時
And didn't that used to be part of the fun, once upon a time?
昔はそれもお楽しみのうちじゃなかったっけ?
We'll be there at the back of the bar
俺たちはバーの奥にいる
In a booth like we usually were
昔いつもいたみたいなボックス席に
Every time there was a rocket launch or some big event
ロケットの打ち上げとか大きなイベントがあるたびにさ

What a death I died writing that song
俺はなんという死を迎えてしまったんだ この曲を書きながら
Start to finish, with you looking on
最初から最後まで、君に見守られながら
It stays between us, Steinway, and his sons
この曲は、俺たちとスタインウェイのピアノ、そしてその息子たちの間に留まるよ
'Cause it's the ultracheese
だって、ウルトラチーズだからさ
Perhaps it's time that you went for a walk
そろそろ散歩に出かけたらどう?
Dressed like a fictional character
架空のキャラクターのみたいな格好で
From a place they called America in the golden age
黄金時代のアメリカと呼ばれた場所から
Trust the politics to come along
政治がやって来ることを信じて
When you were just tryna orbit the sun
ちょうど君が太陽の周りを回ろうとしてた時*1
When you were just about to be kind to someone
ちょうど君が誰かに親切にしようとしてた時
Because you had the chance
なぜなら、君にはそのチャンスがあったからさ

I still got pictures of friends on the wall
壁にはまだ友人の写真が貼ってある
I might look as if I'm deep in thought
俺はまるで深く考えてるように見えるかもしれない
But the truth is I'm probably not
でも、本当はそうじゃないんだ
If I ever was
もしそうだったなら…

Oh, the dawn won't stop weighing a tonne
ああ、夜明けは重さを増すばかり
I've done some things that I shouldn't have done
俺はやるべきではなかったことをいくつもしでかしてきた
But I haven't stopped loving you once
でも、君を愛することは一度だってやめてないんだ

*1:ひとつ歳を取ることを指す決まり文句と掛けている