ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

A Certain Romance / Arctic Monkeys【和訳】

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アンビバレントな郷愁の念。要点は、ここにはロマンスがないってこと。みんな同じような服を着て馬鹿騒ぎして、音楽なんて着メロのためだけ。でも、あいつらも昔からの友達なんだ。平凡で退屈な郊外だけど、ここが俺の愛すべき故郷。 ーA Certain Romance

 

ご機嫌よう、ベラドンナです。なかなか大人になれないピーターパン症候群です。それでも歳だけは重ねて、それを認めたくなくて、昼と夜が逆の生活を年甲斐もなく送り、身体のあちこちに不調をきたしています。いわゆる中二病的なナイーブさをいつまでも卒業できないからこそ、いい歳してこんなブログを書いてしまうわけですが、いい加減ちゃんと大人を、期待される役割を演じなければと実生活で頑張りすぎると、「私は本当はそうじゃないの・・・」とドッと疲弊してしまいます。心が擦り減れば擦り減るほど、何かを守りたくなって夜に言葉が溢れます。纏めきれない言葉の断片たちが、スヌーピーに出てくるライナスの毛布みたいに。

ちゃんと最低限は大人の顔して生きるから、ここでだけはひっそりと、自由に吐露したいのです。"Whatever People Say I Am, That's What I'm Not"(人が俺をどう言おうと、それ全部俺じゃないからという青臭いタイトルに、きっとこれからも共感し続けてしまうって。そして、"A Certain Romance"をいつまでも諦められずに追い求めてしまうって。でも、ロックを愛する老若男女のみなさまも、こういうところ、ありませんか?

というわけで、過度に小っ恥ずかしい感じで始まってしまいましたが、本日はアークティック・モンキーズの超名曲"A Certain Romance"です。NMEの選ぶ2000年代の名曲ランキングでも10位にランクインしており、イギリス本国で非常に愛されている曲です。1stアルバム「Whatever People Say I Am, That's What I'm Not」のラストをきらきらと飾り、青春の輝きをタイム・カプセルのように永遠に閉じ込めています。歌詞に出てくるリーボックやコンバースが意味する文化・社会階層など、描かれるカルチャーはイギリス固有のものですが、拗らせや燻りを捨てられない人なら世界中誰でも、「わかる!」と思うに違いない普遍性を持った超弩級のアンセムだと思います。

リーボックやコンバースのスニーカー、スウェット、着メロにするためだけの音楽、馬鹿騒ぎの荒んだ日々。このアルバムを通じて、どこか醒めた目線で描かれてきたのは、 「チャブ」と呼ばれる、イギリス郊外の労働者階級の若者の典型的なヤンキー文化。そのあまりの平凡さ、退屈さに「ここにはロマンスがない」と言い放ちます。でもその一方で、そんな彼らも幼馴染。たとえ彼らが道を踏み外すようなことがあっても、決して憎むことはできないと、故郷へのアンビバレントな感情を吐露します。

ごく個人的な話で恐縮ですが、この曲を聴くと、郊外出身だった昔の恋人を思い出します。「どうしても抜け出したかった郊外の退屈。でも不良になった地元の奴らだって今でも幼馴染であることには変わりなくて。」という、まさにこの歌詞のような話を聞いて、そこそこ都会のゲーテッド・コミュニティ育ち、世間知らずのベラドンナは、その眼差しにどこかロマンを感じたものでした。

「ここには本当のロマンスがない」と思うのはきっと、自分は他の人とは違う交換不能な存在として、自分だけの固有の生、特別な物語を生きたいと願うから。傲慢かもしれないけれど、あまりに人間くさい感情ではないでしょうか。郊外であっても、都会であっても、無い物ねだりの我々ロマンチストは、「ここは退屈で、ここでは掴めない"本当"があるはず」と、"ここではないどこか"と、恋の偶然、そして愛の必然を探し続けるのでしょう。あくまで故郷、自分のルーツへのアンビバレントな執着を断ち切れないままに。アレックスが近年のライブでも、"We are Arctic Monkeys from High Green!(シェフィールドの故郷の町の名前)"と叫ぶのにグッときます。

こちらは2006年のスコットランドでのライブ映像です。みんな細くて初々しい!


 

それでは、歌詞にまいりましょう。

 

Well, oh, they might wear classic Reeboks
そうだな、彼らは定番のリーボックを履いてるかもしれないし
Or knackered Converse, or tracky bottoms tucked in socks
くたびれたコンバースを履いてるかもしれないし、スウェットの裾を靴下に入れてるかもね
But all of that's what the point is not
でも、そんなことはどうでもいいんだ
The point's that there in't no romance around there
要点は、そこにはロマンスがないってこと
And there's the truth that they can't see
それと、彼らが知ることのできない真実があること
They'd probably like to throw a punch at me
彼らはきっと、俺にパンチを浴びせたいだろうね
And if you could only see 'em then you would agree
もし彼らを見ることがあれば、きっと君も同意するよ
Agree that there in't no romance around there
この辺りにはロマンスがないって

You know? Oh, it's a funny thing, you know
そうだろ? おかしな話だけどね
We'll tell 'em if you like, we'll tell 'em all tonight
お望みなら、今夜彼らに言ってやろうぜ
They'll never listen, because their minds are made up
彼らはきっと聞く耳を持たないだろうね だって心は頑なだから
And course it's all okay to carry on that way
それでもちろん、このままその調子で行けばいいんだよ

'Cause over there there's broken bones
あの辺りはぶっ壊れてるから
There's only music so that there's new ringtones
音楽は新しい着メロになるためにあるだけ
And it dun't take no Sherlock Holmes
シャーロック・ホームズなんて必要ないよ
To see it's a little different around here
この辺りはちょっと違うんだって分かるのに
Don't get me wrong though, there's boys in bands
誤解しないでね バンドを組んでる子たちもいるし
And kids who like to scrap with pool cues in their hands
ビリヤードキューで殴りたがる子たちもいる
And just 'cause he's had a couple of cans
それに、単にいくらか酒を飲んだからって
He thinks it's all right to act like a dickhead
バカをやってもいいと思ってるんだ

Don't you know?  Oh, it's a funny thing, you know
知らないの? 変な話だけどね
We'll tell 'em if you like, we'll tell 'em all tonight
お望みなら、今夜彼らに言ってやろうぜ
They'll never listen, because their minds are made up
彼らはきっと聞く耳を持たないだろうね だって心は頑なだから
And course it's all okay to carry on that way
それでもちろん、これからもその調子で行けばいいんだよ

But I said no, oh no
でも、俺は嫌だって言ったさ
Well, you won't get me to go
そうさ、君は俺を行かせられないよ
Not anywhere, not anywhere
どこにも行かない どこにもね
No, I won't go
絶対行かないんだ
Oh, no, no
ああ、だめだよ

Well, over there, there's friends of mine
だって、あそこには俺の友達がいるんだ
What can I say?  I've known 'em for a long long time
なんて言えばいいかな? 昔からの長い付き合いなんだ
And they might overstep the line
彼らは道を踏み外しちゃうかもしれない
But you just cannot get angry in the same way
でも、同じように怒ることはできないだろ
No, not in the same way
同じようには怒れない
Said, not in the same way
同じようには怒れないって言ってるんだ
Oh no, oh no, no
ああ、無理、無理ってもんだよ

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