ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

My Mistakes Were Made for You / The Last Shadow Puppets【和訳】

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女の無邪気と傲慢。男のねじ曲がった真心。よくある恋の過ち、最も美しくない恋愛の真実。ーMy Mistakes Were Made for You


ご機嫌よう、ベラドンナです。桜が一斉に咲いて散っていくこの時期って、綺麗だけど必要以上にエモーションを強いてくる季節だなとも思います。卒業や異動はいつだって想像していたよりも呆気なく通り過ぎ、慌ただしく次なる日常になだれ込み、気づけば呆気なく順応してしまいます。良くも悪くも、ジタバタしたところで、結局は敷かれたレールの上、社会の歯車として生きるってこういうことなのかもしれません。東京の桜は明日で見納めだとか。

この時期になるといつも浮かぶのがKIRINJIの時間がない」(2018)という曲の歌詞。本当に本当に、歳を重ねるごとに実感が強まってくるのが”サヨナラなんて「なんとなく」だね”というフレーズ。この歌詞を肝に命じて、また会いたい人には、伝えられる時にちゃんと言っておかねばと思う今日この頃です。

うつろう街
うつろう夢
花びらが雨に散れど
僕は歌おう
君が微笑むなら
サヨナラなんて「なんとなく」だね
人さえ人にとどまらぬ
大切なもの見失ってしまいそうさ
ゆえに愛は伝えておこう
今あるだけ


本日は、前回少し触れた"My Mistakes Were Made for You"という曲を和訳します。アークティック・モンキーズのフロントマン、アレックス・ターナーのサイドプロジェクトであるラストシャドウパペッツの1stアルバム「The Age of the Understatement」(2008)に収録されている曲で、MVにはアレックスの当時の恋人のアレクサ・チャンが出演しています。恋の過ちについて歌うこれだけダークな内容の曲のビデオで共演するということは、逆に、すごく関係性が上手くいっていた時期なのかなと勝手に想像します。昔の映画のテーマ曲のような、重厚でドラマチックなサウンドです。私のお気に入りのMVです。前回紹介した映画「サブマリン」と同じリチャード・アイオアディ監督が手がけています。


前回の記事はこちら。


冒頭、「
地震みたいに捉えがたい(subtle)」という表現が出てくるのですが、これは地質的に大きな地震が少ないイギリスならではの感覚なのかなと思いました。こういう日本語との違いって面白いですよね。


メロディはキャッチーですが、恋愛の美しくない面を辛辣にあぶり出した、かなり難解な歌詞です。
「俺たちはただ群衆を追いまわしているだけだった。その只中で粉々に砕け散るまで。」という部分はどういう意味かなと悩みましたが、私はスピッツの「」という隠れた(?)名曲に出てくる「ありがちなドラマをなぞっていただけ あの日々にはもう二度と戻れない」という歌詞を連想しました。恋に落ちている状態では、人は自分の恋愛を、二人だけの特別なドラマだと思い込んで浸っているもの。でも一旦冷めてみると、どうしようもなく「あるある」だらけで、巷にありふれた失敗例だったと総括するようになったりしませんか?

「名声」が関係を狂わせるあたりは有名人ならではかもしれませんが、大人になってからの恋愛が肩書きや経済力から完全に無関係に成立するのが難しいことは、みなさん実感するところではないでしょうか。芥川龍之介は「恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである」と言っていましたが、詩的表現が成立しているうちは、男と女の美しくない剥き出しのエゴをわざわざほじくり返して言及する必要はないですよね。

だからこの世は美しいラブソングで満ちているわけですが、その中で、失敗した恋愛の美しくないエグみ溢れる真実をこれだけ詩的に歌う曲って貴重だと思うんです。化けの皮が剥がれた後の詩的表現。うまくいかない恋愛を描くのが本当にアレックスは上手くて、恋愛に疲れたベラドンナの心に沁みます。22歳の若さでこの歌詞を書いてしまうとは。

さてさて、歌詞にまいりましょう。 

 

About as subtle as an earthquake, I know
地震くらい捉えがたいけど、そうさ
My mistakes were made for you
俺の過ちは君のせいだよ
And in the back room of a bad dream she came
悪夢の舞台裏に彼女はやって来て
And whisked me away, enthused
俺を連れ去り、熱狂させたんだ
And it's solid as a rock rolling down a hill
丘を転がり落ちる岩みたいに確実だよ
The fact is that it probably will hit something
十中八九、何かにぶち当たるだろうってことは
On the hazardous terrain
危なっかしい場所でね

And we're just following the flock around and in between
俺たちはただ群衆を追いまわしてるだけだったよ その只中で
Before we smash to smithereens like they were
粉々に砕け散るまでね 彼らもそうだったみたいに
Then we scramble from the blame
それで責任を押し付けあうんだ

And it's the fame that put words in her mouth
そして、名声が彼女に柄にもないことを言わせるんだ
She couldn't help but spit 'em out
彼女は吐き出さずにはいられなかった
Innocence and arrogance entwined
無邪気さと傲慢さは絡まりあうんだ
In the filthiest of minds
心の一番汚いところで

She was bitten on her birthday, and now
彼女は誕生日に噛み付かれて、今
A face in the crowd, she's not
群衆の中の顔 彼女はいない
And I suspect that now, forever the shape
She came to escape is forgot
そして今や、永遠に
彼女が逃げ出してきた姿は忘れ去られたんじゃないかな
And it's a lot to ask her not to sting
彼女に刺激しないでいてもらうのは困難なんだ
And give her less than everything
それで、彼女にほとんど全てを捧げても
Around your crooked conscience she will wind
ねじ曲がった真心に彼女はツケ上がるだろうね

'Cause we're just following the flock around and in between
俺たちはただ群衆を追いまわしてるだけだから その只中で
Before we smash to smithereens like they were
粉々に砕け散るまでね 彼らもそうだったみたいに
Then we scramble from the blame
それで責任を押し付けあうんだ

And it's the fame that put words in her mouth
そして、名声が彼女に柄にもないことを言わせるんだ
She couldn't help but spit 'em out
彼女は吐き出さずにはいられなかった
Around your crooked conscience she will wind
ねじ曲がった真心に彼女はツケ上がるだろうね
And it's a lot to ask her not to sting
彼女に刺激しないでいてもらうのは困難なんだ
And give her less than everything
それで、彼女にほとんど全てを捧げても
Innocence and arrogance entwined
無邪気さと傲慢さは絡まりあう

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