ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

From the Ritz to the Rubble / Arctic Monkeys【和訳】

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昨晩酔ってる時には意味があるように思えた馬鹿騒ぎも打ち明け話も、朝になったらもう何の意味もないんだ。しこたま飲んでオールした朝って、街が妙に違って見えませんか? ーFrom the Ritz to the Rubble 


こんばんは、ベラドンナです。ワクチン副反応でベッドから動けないまま、今年の16回目の貴重な土曜日も終わってしまいましたが、コーチェラフェスティバルの配信を見られたことは大収穫でした。まさにアレックスが"She Looks Like Fun"で「パーティを頭蓋骨にプラグインした」と歌っている状態なわけではありますが。

"She Looks Like Fun"の歌詞はこちら。


今回のコーチェラ、艶っぽくも凛とした佇まいのプエルトリコの歌姫The Maríasと、カリフォルニアの風になびく白シャツが眩しかった深い美声のGiveon、レズビアンとしての恋愛感情を率直に歌うノルウェーのロック少女girl in redが特に印象的でした。そして、トリのビリー・アイリッシュのステージにゴリラズが登場して"Feel Good Inc."を歌ってくれたのにはめちゃくちゃ興奮しましたね。しかし、ここまで挙げた人々、ゴリラズを除いてたぶんみんな年下か…というショックも受けました。ベラドンナも年をとったものです。

さて、そんな引きこもりの休日に鑑賞するのは"From the Ritz to the Rubble "*1という曲。

 
アークティック・モンキーズ の1stアルバム「Whatever People Say I Am Thats What I Am Not」(2006)の最後から2番目の曲です。前にもお話しした通り、アラン・シリトーの小説『土曜の夜と日曜の朝」に則って短編集のように並べられた楽曲たちの中で、「日曜の朝」のパートを担うのがこの曲なんです。

前にご紹介した"The View From the Afternoon"が土曜の午後に夜遊びに繰り出す前の期待とその後に待ち受けているだろう失望を歌っていたのに呼応して、この曲では実際の土曜の夜がどうだったかを、翌朝になって語っています

"The View From the Afternoon"の記事はこちらです。


夜酔っぱらっている間は、しょうもない馬鹿騒ぎでも、ふとしんみりした時の打ち明け話でも、やけに深淵を覗いたかのような充実感を覚えて、それなりに盛り上がって帰るのが面倒だと思ってたのに。やがて明け方になり、すっかりシラフになり。空が白んでいくのを見るにつけ、「一体何やってたんだろう?」と虚しさが込み上げてきて、暗い時には見えなかった繁華街の汚れがやたらと目について

この曲では、朝になったことを「靄(もや)が晴れた」と表現しているのが、なんともイギリスっぽくて趣深いです。靄の湿り気で街燈がぼんやりと光る暗い路地のイメージが浮かびます。気候風土と音楽性って、切っても切り離せないものだと思います。色々な国の音楽を聴く楽しさは、そんなところにもあるよなとコーチェラを見ていても感じました。雲が多くて靄ってて湿っぽいUK、やっぱり好きですね。

さて、歌詞にまいりましょう。このアルバムのジャケット(特に裏側)に、特に似合ってる曲だと思います。

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Well, last night these two bouncers
そうそう昨晩、二人の用心棒は
And one of 'em's alright, the other one's a scary'un
一人はいい奴、もう一人はおっかない奴
His way or no way; totalitarian
彼の道の他に道はなし 全体主義者

He's got no time for you looking or breathing
彼は、見る隙も息をする隙も与えないんだ
How he don’t want you to, so step out the queue
自分の気に入らないやり方ではね だから列からはみ出してでもみろ
He makes examples of you, and there's nowt you can say
彼は君を見せしめにして、君は何も言えなくなっちまう
Behind they go through to the bit where you pay
みんなが入場料を払ってる後ろで
And you realise then that it's finally the time
ついにその時が来たって悟るんだ

To walk back past ten-thousand eyes in the line
列の万人の目をすり抜けようと
And you can swap jumpers and make another move
ジャンパーを交換して、別の手を打つことだってできる
Instilled in your brain you've got something to prove
脳裏に刻み込まれた、何かを証明するために
To all the smirking faces and the boys in black
ニヤニヤした顔や黒服の少年たちにね
Why can't they be pleasant? Why can't they have a laugh?
どうして奴らは楽しめない?

どうして奴らは笑えない?
He's got his hand in your chest, he wants to give you a duff
彼は君の胸ぐらを掴んでて、殴りたがってるんだ
Well, secretly I think they want you all to kick off
まあ、内心ではみんな、君がおっ始めてほしいと思ってるんだろうね
They want arms flying everywhere and bottles as well
至るところに腕が飛び交い、ボトルも飛び交うのを望んでるんだ
It's just something to talk about, a story to tell, yeah
ただ単に話のネタとしてね、そうさ

Well, I'm so glad they turned us all away, we'll put it down to fate
やれやれ、みんなから追い払われてほんと良かったよ 運命としか言いようがない
I said a thousand million things that I could never say this morning
今朝じゃ言えないようなことを一千万個も言っちまった
Got too deep, but how deep is too deep?
深入りしすぎちゃったけど、どれだけ深けりゃ深すぎるんだ?

Well, this town's a different town today
やれやれ、この街は今日は違う街だ
Said, this town's a different town to what it was last night
この街は昨晩とは違う街だって言ったんだ
You couldn't have done that on a Sunday
日曜にはあんなことできるわけない
And that girl's a different girl today
それに、あの子も今日は別人だ
Said, that girl's a different girl to her you kissed last night
あの子は昨晩キスした子とは別人だって言ったんだ
You couldn't have done that on a Sunday
日曜にはあんなことできるわけない
Of course not
もちろん、そんなことしないさ

Well, I'm so glad they turned us all away, we'll put it down to fate
やれやれ、みんなから追い払われてほんと良かったよ 運命としか言いようがない
I thought a thousand million things that I could never think this morning
今朝じゃ考えもしないようなことを一千万個も考えちまった
Got too deep, but how deep is too deep?
深みにハマりすぎちゃったけど、どれだけ深けりゃ深すぎるんだ?

Last night, what we talked about
昨晩、俺たちが話したこと
It made so much sense
それはすごく意味があったんだ
But now the haze has ascended
でも今、靄は晴れちまった
It don't make no sense anymore
もう何も意味がないんだ
I said, last night, what we talked about
そうだよ、昨晩、俺たちが話したこと
It made so much sense
それはすごく意味があったんだ
But now the haze has ascended
でも今、靄は晴れちまった
It don't make no sense anymore, oh
もう何も意味がないんだ、ああ

*1:The Ritzはマンチェスターのライブハウスの名前のようです。誇示や虚飾といった字義通りの意味かもしれません。Rubbleは瓦礫という意味。