ベラドンナの部屋

アークティック・モンキーズの歌詞を語ります

Golden Trunks / Arctic Monkeys【和訳】

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SFが現実化する時代の愛。精神世界で通じ合った恋人は、腐った政治の夢を見るか? ーGolden Trunks

 

こんばんは、ベラドンナです。
まだ肌寒いうちに記事を書きたい冬の歌がたくさんあるのに、季節は待ってくれませんね。

今回鑑賞するのは「Tranquility Base Hotel & Casino」の5曲目、重々しいイントロが印象的な"Golden Trunks"です。


「俺の精神の中の小委員会」という訳がなんとも上手くないなあと思うのですが、良い表現が見つからず。平野啓一郎の小説に出てくる「分人主義」のような感じをイメージしています。人間の中にはいくつもの人格があって、その集合体が「私」なのだ、というような。ラスト・シャドウ・パペッツの2ndのボーナストラックの"The Bourne Identity"でもこういったテーマが歌われていて、すごく良い歌詞なので今度また紹介します。

ラスト・シャドウ・パペッツの2ndの頃のインタビューで、アレックスは「恋愛の歌からは一旦離れる」宣言をしていましたが、この曲は今作の中では最もラブソングに近いと語っています。ただし、恋する相手はどうやら、実体があるかどうかも定かではない「精神世界で通じ合った恋人」のようです。彼女の空想したことが、直接主人公の頭の中に流れ込んでくるような感覚なのでしょうか。SFが現実化する時代の愛

さてさて、歌詞にまいりましょう。

Last night when my psyche's subcommittee sang to me in its scary voice
昨夜、俺の精神の中の小委員会は不気味な声で歌った
You slowly dropped your eyelids
君はゆっくりと瞼を下ろした
When true love takes a grip, it leaves you without a choice
真実の愛が手綱を握った時、君に選択の余地はない

And in response to what you whispered in my ear
そして、俺の耳元で君が囁いた言葉に答えるなら
I must admit, sometimes I fantasise about you too
正直言うと、俺もときどき君のことを妄想してしまうんだ

The leader of the free world
自由世界のリーダーは
Reminds you of a wrestler wearing tight golden trunks
金色のトランクスを履いたレスラーを連想させる*1
He's got him sen a theme tune
テーマ曲まである
They play it for him as he makes his way to the ring
リングに向かう彼のために演奏されるんだ

And in response to what you whispered in my ear
そして、俺の耳元で君が囁いた言葉に答えるなら
I must admit, sometimes I fantasise about you too
正直言うと、俺もときどき君のことを妄想してしまうんだ

In the daytime
昼の間

Bendable figures with a fresh new pack of lies
新しい嘘の詰め合わせを持ったゴム人形
Summat else to publicise
他に公表するような何か
I'm sure you've heard about enough
もう充分聞かされてきたよね

And in response to what you whispered in my ear
そして、俺の耳元で君が囁いた言葉に答えるなら
I must admit, sometimes I fantasise about you too
正直言うと、俺もときどき君のことを妄想してしまうんだ

*1:このアルバムのリリースは2018年なので、トランプ元大統領の在職期間の最中。「金色のトランクスを履いた自由の国のリーダー」と聴けば、誰もが彼を連想させられたでしょう。ただし、この曲はトランプを直接的に歌っているわけではなく、政治批判の意図を感じる「ゴム人形」も含めて、あくまで主人公が精神世界で結びついた女性の空想の中の登場人物という設定のようです。